物価とは何か
[経済・ビジネス]
渡辺努/著
出版社名講談社(講談社選書メチエ 758)
出版年月:2022年1月
ISBNコード:978-4-06-526714-1
税込価格:2,145円
頁数・縦:333p・19cm
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物価が上下する仕組みと、経済についてやさしく解説する。
【目次】
第1章 物価から何がわかるのか
それは何の値段なのか
物価はこうして「作られる」
物価は誰のものか―企業の物価・地域の物価・個人の物価
第2章 何が物価を動かすのか
インフレもデフレも気分次第
ハイパーインフレが教えてくれる物価の本質
予想との格闘
第3章 物価は制御できるのか―進化する理論、変化する政策
フィリップス曲線という発見
信認と独立
おしゃべりな中央銀行
予想は操作できるか
予想は測ることができるか
第4章 なぜデフレから抜け出せないのか―動かぬ物価の謎
価格はなぜ毎日変わらないのか?
ミクロとマクロの辻褄が合わない!
価格を変えない日本企業
デフレで何が困るのか
商品の新陳代謝と企業の価格更新
第5章 物価理論はどうなっていくのか―インフレもデフレもない社会を目指して
【著者】
渡辺 努 (ワタナベ ツトム)
1959年生まれ。東京大学経済学部卒業。日本銀行勤務、一橋大学経済研究所教授等を経て、東京大学大学院経済学研究科教授。株式会社ナウキャスト創業者・技術顧問。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。ハーバード大学Ph.D.。専攻は、マクロ経済学。
【抜書】
●ノルム(p87)
社会の人々が共有する相場観。デフォルト。
物価や賃金について、「毎年これくらいの引き上げ」というノルムがあり、社会で共有されている。
●自然失業率仮説(p127」)
インフレ率=インフレ予想ーa×失業率+b
aとbは正の定数。国によって異なる値を取る。
●コールレート(p158)
日本銀行は、かつては公定歩合の上げ下げで景気のコントロールをしていた。
現在は、コールレートについて日銀が目標値を決め、その水準が実現できるように、資金量を調整している。
公定歩合……日銀が銀行などにおカネを貸すときに適用される金利。
コールレート……金融機関が相互に資金を融通するときに適用される金利。
●商品開発(p282)
日本では、物価上昇局面で、商品の値上げをするのではなく、内容量を減らして価格を据え置きにすることがしばしば。
しかし、そのための新しい容器を開発したり、商品開発の手間がかかる。
〔 残業してまで「商品開発」に取り組む技術者に頭が下がるなあと思いつつ、しかし、これは異様な光景だと感じました。原価の上昇分を価格に転嫁するというのは、通常の社会であれば、フェアな行為です。恥ずるところは何ひとつありません。しかし価格据え置きが常態化し、消費者もそれが当然と考える社会では、フェアな転嫁も許されず、その結果、深夜の「商品開発」が行われているのです。しかも、その「商品開発」は、消費者が決して喜ぶことのない類のものです。それどころかSNSは消費者の怒りで満ちています。表面価格の引き上げも小型化も、どちらも消費者を怒らせるだけです。
あれだけの労力を本物の商品開発に使えば、これまで見たことのない新商品が生まれ、多くの消費者を喜ばせることができるはずなのにと悔しく思うと同時に、現場の方々の悔しさは私の比ではないだろうと想像しました。価格据え置きの常態化は、現場の技術者から前向きな商品開発に取り組む機会を奪うというかたちで、社会に歪みを生んでいるのです。〕
(2022/9/23)NM
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