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人類冬眠計画 生死のはざまに踏み込む
 [医学]

人類冬眠計画: 生死のはざまに踏み込む (岩波科学ライブラリー 311)
 
砂川玄志郎/著
出版社名:岩波書店(岩波科学ライブラリー 311)
出版年月:2022年4月
ISBNコード:978-4-00-029711-0
税込価格:1,320円
頁数・縦:112, 3p・19cm
 
 冬眠する霊長類が見つかったり、マウスを冬眠(休眠?)状態にさせることができるようになったり……。もしかすると、人間を冬眠させることもできるかもしれない。そんなSFのようなことを実現させるための研究を報告する。
 ヒトを冬眠させる技術は、宇宙旅行や未来旅行だけではなく、重篤な患者の搬送や手術にも役立つという。夢やロマンだけでなく、現実的な需要があるのだ。
 
【目次】
第1章 冬眠との出会い
 人工冬眠とはなにか
 小児科医として働く
  ほか
第2章 睡眠研究から休眠研究へ
 概日時計と睡眠
 睡眠の謎
  ほか
第3章 冷たいことにはわけがある
 冬眠研究の歴史
 冷たい哺乳類
  ほか
第4章 哺乳類を冷たくするには
 視床下部は体温調節の司令塔
 QRFPというペプチド
  ほか
第5章 人工冬眠を目指して
 人類冬眠計画
 人工冬眠の実現性
  ほか
 
【著者】
砂川 玄志郎 (スナガワ ゲンシロウ)
 1976年、福岡県生まれ。2001年、京都大学医学部卒業。小児科医。大阪赤十字病院、国立成育医療研究センターで医師として勤務。2010年、京都大学大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)。理化学研究所生命システム研究センター研究員、同生命機能科学研究センター基礎科学特別研究員などを経て、理化学研究所生命機能科学研究センター上級研究員。
 
【抜書】
●32℃(p41)
 体温35℃以下……偶発的低体温症。体温を戻すために振戦(ふるえ)が生じる。
 32℃を下回ると振戦もできなくなり、心臓の不整脈が生じ始め、血圧が維持できなくなり、意識が朦朧としてくる。命の危機。
 
●中途覚醒(p43)
 冬眠中の、体温が低下した状態を「休眠(torpor: トーパー)」と呼ぶ。
 ハムスターは、ある程度体重が重くなり、数カ月間低温環境にさらされると体温が低下する。休眠に入ると、室温より数度高い程度の体温を維持する。
 しかし、数日間に1回、37℃前後の正常体温に戻る。
 この一時的な復温を中途覚醒と呼び、小型の冬眠動物には共通して見られる現象である。
 中途覚醒の間に餌を食べる動物もいれば、まったく動かずに体温だけ上昇する動物もいる。いずれにしても1日以内に再び休眠状態になり、体温が低下する。
 
●爬虫類(p45)
 爬虫類は、もともと体内で発熱する機能を持っていないので、冬眠中でなくても体温が下がると代謝が低下する。体温が下がれば冬眠に近い状態になり得る。哺乳類とは異なり、代謝が落ちるから体温が落ちるのではなく、体温が落ちるから受動的に代謝が低下する。
 ただし、冬眠中は長期にわたって動かず体温も上がらないため、冬眠に固有の機能が働いていると考えられている。
 
●QRFP(p70)
 マウスによる実験で、視床下部に存在する、QRFPを含有する神経(Q神経)を興奮させると、何日間も体温を低下させられることが分かった。休眠(トーパー)するマウスの発見。2017年。
 QRFP……Pyroglutamilated RFamide peptide:   ピログルタミル化RFアミド・ペプチド。
 
●フトオコビトキツネザル(p82)
 マダガスカル島に生息する霊長類。2004年、乾季に冬眠することが発見された。冬眠中、5日以上も体温が20℃台になる日が続く。中途覚醒あり。乾季中には、主食としている木の実が枯渇するため、冬眠する?(p11)
 現在、マダガスカル島では、4種類のキツネザルが冬眠することが確認されている。
 2015年、ベトナムに生息する霊長目ロリス科のピグミースローロリスが冬眠することが報告された。
 
(2022/11/13)NM
 
〈この本の詳細〉

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