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権力は腐敗する
 [社会・政治・時事]

権力は腐敗する
 
前川喜平/著
出版社名:毎日新聞出版
出版年月:2021年9月
ISBNコード:978-4-620-32696-2
税込価格:1,760円
頁数・縦:302p・19cm
 
 アベスガ政権、スガスガ政権二代に渡る国政私物化を批判し、賢明な主権者であることの必要性を語る。
 菅内閣が終焉したのは2021年10月。微妙な時期の出版だった。
 
【目次】
第1章 安倍晋三氏による国政私物化―加計学園問題
第2章 私物化の継承と暗躍する官邸官僚
第3章 安倍・菅政権における政と官
第4章 人災だった全国一斉休校
第5章 奪われ続ける自由
第6章 主権者を育てる
 
【著者】
前川 喜平 (マエカワ キヘイ)
 1955年奈良県御所市生まれ。東京大学法学部卒業。1979年、文部省(現・文部科学省)入省。宮城県教育委員会行政課長、ユネスコ常駐代表部一等書記官、文部大臣秘書官などを経て、2012年官房長、2013年初等中等教育局長、2014年文部科学審議官、2016年文部科学事務次官に就任。2017年1月、退官。現在、自主夜間中学のスタッフとして活動するほか、講演や執筆も行う。
 
【抜書】
●新自由主義(p62)
〔 人間より国家を優先する国家主義と人間より企業を重視する新自由主義は、この40年間の日本の政治の基調をなしてきたが、国家主義の傾向が強かった安倍政権に対し、菅政権では新自由主義が前面に出てきた。それは、菅政権が新たに立ち上げた成長戦略会議のメンバーである竹中平蔵氏(パソナグループ取締役会長)、デービッド・アトキンソン氏(元外資系証券アナリスト)、内閣官房参与に任命された元財務省官僚の高橋洋一氏といった菅ブレーンの顔ぶれを見ても分かる。〕
 
●和泉洋人(p72)
 菅政権下の首相補佐官。もともと、建設省に入省した技官。
 小泉純一郎内閣の時に国土交通省から内閣官房都市再生本部事務局次長に登用された。
 2009年7月、麻生太郎内閣の末期に地域活性化統合事務局の局長に抜擢。都市再生や地域再生に加えて特区制度も担当。旧民主党政権下でもそのまま留任。
 2012年、定年1年前に国土交通省を退官した後、10月に内閣官房参与に任命される。
 同年12月、第2次安倍内閣でも内閣官房参与にとどまる。
 2013年1月には、首相補佐官に登用され、安倍政権・菅政権を通じて9年近くこの地位に座り続ける。
 
●何でも官邸団(p103)
〔 官房長官の菅氏と副長官の杉田(和博)氏のコンビは、内閣が有する人事権をフル活用して、霞が関の官僚集団を支配してきた。事務次官や局長の在任期間は長くても2年程度だから、安倍政権と菅政権の9年近くの間に各省庁の幹部ポストは、4回以上は交代していることになる。その都度、官邸の言いなりになる人物ばかりを登用してきたわけだから、今や霞が関は何でも官邸の言うことを聞く官僚ばかりになっている。霞が関官僚集団は「何でも官邸団」になったのだ。「ご無理ごもっとも」「無理が通れば道理が引っ込む」という状態だ。〕
 
●アーツカウンシル(p203)
 多様な芸術文化活動を支える機関。1946年、イギリスで設置された。
 初代会長は経済学者J・M・ケインズ。芸術は本来自由なものである。芸術文化への政治介入を避けるため、芸術文化活動への支援を政府から一定の距離を置く機関に担わせることの必要性を唱える。
 「一定の距離」は、「アームズ・レンクス(腕の長さ)」と呼ばれる。大枠の方向性や支援の規模は政府が決めるとしても、具体的にどの芸術文化活動を助成するかは、芸術文化の世界の専門家(目利き)の判断にゆだねる仕組み。
 反面教師とされたのはナチス・ドイツによる文化芸術の統制と政治利用。
 
●ボイテルスバッハ・コンセンサス(p247)
 1976年、旧ドイツのボイテルスバッハで作られた政治教育のガイドライン。
 ① 圧倒の禁止の原則……教員は、生徒を期待される見解をもって圧倒し、生徒が自らの判断を獲得するのを妨げてはならない。
 ② 論争性の原則……学問と政治の世界において議論があることは、授業においても議論があることとして扱う。
 ③ 生徒志向の原則……生徒が自らの関心・利害に基づいて効果的に政治に参加できるよう、必要な能力の獲得を促す。
 学校教育の政治的中立性は必要だが、教師が自分の政治的見解を述べてはいけないということにはならない。
 
●部分社会論(p253)
 現在、「特別権力関係論」に代わって、裁判所では「部分社会論」を採用している。裁判所が違法・違憲の判断をしないという点において、両者は同質。
 特別権力関係論……公権力を持つ国や自治体などと「特別な関係」にある国民に対して、公権力側は、法律の根拠がなくても、包括的な支配権に基づいて命令、懲戒、人権制限などを行うことができ、これらの公権力側の行為は裁判で争うこともできないとする法理論。「特別な関係」にある国民としては、受刑者、公務員、国公立学校の在学者、国公立病院の入院者などがあたる。現在では、学説上も判例上も支持されていない。
 部分社会論……部分社会とは、学校、政党、地方議会など、一定の構成員からなる団体や組織のこと。部分社会の中の規律はその部分社会に任されており、裁判の対象にならないという考え方。
 
(2022/11/28)NM
 
〈この本の詳細〉

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