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通訳者と戦争犯罪
 [歴史・地理・民俗]

通訳者と戦争犯罪
 
武田珂代子/〔著〕
出版社名:みすず書房
出版年月:2023年6月
ISBNコード:978-4-622-09617-7
税込価格:4,950円
頁数・縦:282p, 26p 20cm
 
 第二次世界大戦後、対日英軍戦犯裁判でBC級戦犯として起訴された39人のうち、38人が有罪判決を受け、9人が死刑となった。ほとんどが日本占領地の地元住民や連合軍捕虜に対する虐待に「関与した」罪に問われた。有罪となったうちの17人、死刑となったうちの6人は台湾人だった……。
 本書では「言語変換機」(p.4)であり、「通訳しただけ」「媒介」「機関」「機械」「オウム」「メッセンジャー」(p.119)たる通訳者を、戦犯として裁けるのか、ということが大きなテーマである。それは、通訳者は通訳によって知り得た秘密を第三者に漏らしてはいけないということともに、通訳者の倫理規定にも関係する。プロとして雇われた通訳者は、機械のように言葉を「媒介」する義務があり、その業務に関して裁かれるべきではない、という考え方である。通訳者がいなければ、裁判も、警察の取り調べも、戦犯裁判も、順調に進まない。そこで罪に問われたら、質の高い通訳者を雇うことはできないし、通訳を引き受ける者はいなくなる。日本軍のように半強制的に徴収するしかなくなる
 ところで、有罪となった者のうち、台湾人以外にも海外で生まれ育った日本人が多数存在した。これらの被告人たちは、部隊のなかでは蔑まれ、尋問を受けた地元民からは恨みを買った。板挟みであったと言えよう。戦争が引き起こしたもう一つの悲劇なのかもしれない。
 
【目次】
序論 「伝達人」が罰されてしまったのか?
第1部 対日英軍戦犯裁判における被告人・証人としての通訳者
 第1章 被告人となった通訳者
 第2章 通訳者の罪状
 第3章 通訳者の抗弁
 第4章 判決とその後
第2部 戦争・紛争における通訳者のリスク、責任、倫理
 第5章 通訳者と暴力の近接性
 第6章 通訳者の可視性と発話の作者性
 第7章 戦争犯罪における通訳者の共同責任
 第8章 犯罪の目撃者としての通訳者
結論 通訳者を守るために
 
【著者】
武田 珂代子 (タケダ カヨコ)
 熊本市生まれ。専門は翻訳通訳学。米国・ミドルベリー国際大学モントレー校(MIIS)翻訳通訳大学院日本語科主任を経て、2011年より立教大学異文化コミュニケーション学部教授。現在、同学部特別専任教授。MIISで翻訳通訳修士号、ロビラ・イ・ビルジリ大学(スペイン)で翻訳通訳・異文化間研究博士号を取得。
 
(2023/9/30)NM
 
〈この本の詳細〉


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