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モンテレッジォ小さな村の旅する本屋の物語
 [ 読書・出版・書店]

モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語 (文春文庫 う 30-3)
 
内田洋子/著
出版社名:文藝春秋(文春文庫 う30-3)
出版年月:2021年11月
ISBNコード:978-4-16-791787-6
税込価格:935円
頁数・縦:330p・16㎝
 
 「本の行商」という、現在の日本では全くなじみのない商売に従事した「村」が、イタリア北部の山の中に存在した(する)。そんなモンテレッジォとイタリアの本屋、出版にまつわるエッセー。
 イタリアの山奥の村の伝統と、家族経営の奥深さに触れることができる。
 
【目次】
1 それはヴェネツィアの古書店から始まった
2 海の神、山の神
3 ここはいったいどこなのだ
4 石の声
5 貧しさのおかげ
6 行け、我が想いへ
7 中世は輝いていたのか!
8 ゆっくり急げ
9 夏のない年
10 ナポレオンと文化の密売人
11 新世界に旧世界を伝えて
12 ヴェネチアの行商人たち
13 五人組が時代を開く
14 町と本と露天商賞と
15 ページに挟まれた物語
16 窓の向こうに
 
【著者】
内田 洋子 (ウチダ ヨウコ)
 1959年兵庫県神戸市生まれ。東京外国語大学イタリア語学科卒。通信社ウーノアソシエイツ代表。欧州と日本間でマスメディアに向けて情報を配信。2011年、『ジーノの家 イタリア10景』で日本エッセイスト・クラブ賞、講談社エッセイ賞を同時受賞。2019年、ウンベルト・アニェッリ記念ジャーナリスト賞、2020年、イタリア版の本屋大賞・第68回露天商賞受賞式にて、外国人として初めて“金の籠賞(GERLA D'ORO)”を受賞。
 
【抜書】
●マラスピーナ家(p132)
 中世、10世紀以来、モンテレッジォおよび周辺の山や村を支配した領主。出自はフランク族。
 13世紀になると、「花咲くイバラ」「枯れたイバラ」の二つの閥に分かれた。モンテレッジォは、直系「花咲くイバラ」閥に統治された。
 分家「枯れたイバラ」閥の本城を置いたのは、ムラッツォ村。そこでダンテをもてなした。「ダンテの家」がある。
 
●イタリア語(p143)
 神聖ローマ帝国の皇帝フリードリヒ2世は、シチリア王国に家来たちを集め、机上で「イタリア語」を創ろうと試みた。「教皇は、キリスト教布教のためにラテン語を持つ。ならば、自分も皇帝としての考えを広めるために、独自の言語を持とうではないか。その言語による文学と教養も必要だ。」
 自分の創った言語で、ばらばらの領土を統一しようと試みたのである。
 フリードリヒ2世は詩の形式まで創った。13世紀初めに生まれたソネット。トルバドゥールの詩を参考にして、家来たちは必死で詩作練習を重ねた。
 
●フィヴィッツァーノ村(p161)
 モンテレッジォから見て、フィレンツェ寄りの山奥にある。八十余ある分村を合わせると人口は8,000人ほど。
 ヤコポは、1471年に村からヴェネツィアに移住、本づくりを習得した。
 村に帰ると印刷・出版業を始めた。鋳造活字から印刷機まで、オリジナルを開発。イタリア製の活版印刷機の第一号?
 1年で閉業。しかし、ヴェネツィアに戻ってしばらく働いた後、1477年に再び村で印刷・出版業を開始。しかし、低迷。廃業した翌年を最後に、彼の足跡はぱたりと途絶えている。
 
●ニコラウス5世(p186)
 アペニン山脈からリグリア海への一帯の出身の教皇。大理石の採石地カルラーラと隣接するサルザーナという町の生まれ。1447年、教皇に登位。
 ローマ復興計画のため、故郷から莫大な量の大理石を運んだ。在位8年だったため、工事は完成せずに中断。
 1448年には、パチカン図書館を創設。代々の教皇から引き継がれたラテン語や古代ギリシャ語、ヘブライ語の古写本350点で開館。蔵書を増やすため、ヨーロッパ中の富裕者や教会、知識人たちから希少な本を買い集める。
 
●ポントレモリ(p250)
 モンテレッジォの行商仲間5人が、1908年、ピアチェンツァで会社を設立。ポントレモリの本屋の出版社。
 ベルト―二家、二つのタラントラ家、ゲルフィ家、リンフレスキ家。
 仕入れ、配本、在庫管理。取次業務。委託販売の始まり。
 
●生き方のいろは(p253)
 タラントラ家の人の言葉。
 「本屋をしていると、知らず知らずのうちにたくさんのことを覚えます。知識だけではありません。信用を得るということ。誰にでも礼儀正しく親切であること。本を売ることは、生き方のいろはです。」
 
【ツッコミ処】
・人口32人(p172)
〔 現在(二〇一八年時)モンテレッジォの人口は三十二人である。男性十四人、女性十八人。そのうちの四人が九十歳代だ。就学児童も六人いるものの、村に幼稚園や小・中学校はない。
 食料品や日用雑貨を扱う店もない。薬局や診療所もない。銀行もない。郵便局は、三十年ほど前に閉鎖されてしまった。鉄道は通っていない。山の上まで行くバスもない。
 村は老いて、枯れている。〕
  ↓
 しかし、バールはある!
 
(2023/9/25)NM
 
〈この本の詳細〉


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