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教科書には載っていない維新直後の日本
 [歴史・地理・民俗]

教科書には載っていない 維新直後の日本
 
安藤優一郎/著
出版社名:彩図社
出版年月:2022年4月
ISBNコード:978-4-8013-0596-0
税込価格:1,430円
頁数・縦:221p・19cm
 
 幕末の動乱の影響で、明治維新政府が誕生してもすんなりと安定した国家建設とはならなかった。そんな維新直後の混乱した社会を考察する。
 
【目次】
第1章 維新直後の新首都は大混乱
第2章 天皇が消えて衰退する京の都
第3章 日本全国で不平不満が爆発
第4章 新政府はいきなり崩壊寸前
第5章 文明開化の光と影
第6章 新時代の生活がはじまったものの……
 
【著者】
安藤 優一郎 (アンドウ ユウイチロウ)
 1965年千葉県生まれ。早稲田大学教育学部卒業、同大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。文学博士。JR東日本「大人の休日倶楽部」など生涯学習講座の講師を務める。
 
【抜書】
●三田(p40)
 明治4年(1871年)3月、慶應義塾は、芝新銭座から三田に移転する。敷地は1万1856坪で、新銭座の30倍の広さに。
 肥前島原藩松平家の中屋敷だった場所。維新後、政府に没収されていた。
 福沢諭吉が政府や東京府に運動し、拝借地とした。
 明治5年、福沢は、東京市中の拝借地を拝借人もしくは縁故ある者に払い下げるという政府の方針をいち早く察知し、公示されたその日に東京府庁に代理人を出頭させる。払い下げを希望する者や地所を記帳する書類など、役所では何も準備できていなかったが、無理やり上納金を受け取らせる。代価は500円、現在の価値では500万円ほど。
 その後、松平家が福沢に対して三田中屋敷の譲渡を強く求めてきたが、「島原藩の屋敷だったことなど自分は知らない。東京府からの拝借地を払い下げられただけのことであり、この件は東京府に掛け合ってほしい」と突っぱねた。松平家は、地所を折半しようとまで申し出てきたが、福沢は取り合わなかった。
 廃藩置県により、旧藩主の諸大名は東京在住が義務付けられた。そのため、松平家も東京に住居を探さねばならなかったのである。
 『慶應義塾百年史』上巻(慶應義塾)による。
 
●静岡学問所(p138)
 徳川宗家の静岡藩には、静岡学問所と沼津兵学校という、他藩から注目された2つの教育機関があった。
 両機関とも、洋行経験のある藩士(元幕臣)が教授陣に名を連ね、時代の最先端を行く教育機関として全国から熱い視線が注がれた。たとえば静岡学問所では、英語、フランス語、オランダ語、ドイツ語の学習コースが設けられていた。
 元幕臣の子弟を優秀な藩士に育て上げるとともに、諸藩からの留学希望者も殺到した。また、諸藩の求めに応じて、英学や洋算、フランス式の軍事調練を教授する藩士が派遣された。その数は256人に達する。
 「天朝御雇(てんちょうおやとい)」と称して、政府からの出仕要請を受けることもあった。静岡学問所の運営に当たった津田真道や、沼津兵学校で頭取を務めた西周など。両名とも2年以上のオランダ留学経験があった。ライデン大学で法律学や経済学を学び、帰国すると開成所で最新の知識を教授した。維新後、静岡に転身。
 
●人力車(p162)
 人力車の登場は、明治3年(1870年)3月。和泉要助・鈴木徳次郎・高山幸助のグループが人力車の営業を東京府から許可され、日本橋の高札場前に人力車を置いて営業を開始。
 翌4年末には東京府下で1万820輌の人力車があった。明治9年には2万5000輌。
 当初は、日本橋から両国まで2キロ弱で12〜13銭。明治5年4月には、東京府が1里6銭2厘と定める。その後も、人力車の数が増えて料金は下落。
 幕末には、大八車のような荷車に人を載せて運ぶ事例が出てくるが、椅子に座ったスタイルの人力車は明治に入ってから。
 人を車に乗せて引くという人力車は日本独自のものと言われれるが、フランスに類似する先例があった。しかし、日本ほど普及した国はない。
 車夫には、士族からの転身も少なくなかった。秩禄処分により、手に職のない士族が車夫になる。
 
●清水喜助(p183)
 現在の清水建設の2代目にあたる大工。
 横浜でアメリカ人建築家ブリジェンスに西洋建築を学ぶ。日本の伝統的建築技術を基礎に和洋折衷の擬洋風建築を誕生させた。木骨石造、ヴェランダ、ナマコ壁、日本屋根の4要素が特徴。
 最初の作品は、明治元年、築地居留地内に造られた築地ホテル館。基本設計はブリジェンス、実施設計と施工は喜助が手掛けた。
 明治5年、第一国立銀行(日本橋兜町)。
 明治7年、為替バンク三井組(日本橋駿河町)。
 
●テニス(p216)
 明治3年(1870年)、横浜居留地に住む外国人の手で山手公園が整備された。日本初の洋式公園。
 日本で初めてテニスがプレーされたテニス発祥の地。
 
(2022/10/3)NM
 
〈この本の詳細〉


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