SSブログ

進駐軍を笑わせろ! 米軍慰問の演芸史
 [エンターテインメント]

進駐軍を笑わせろ!: 米軍慰問の演芸史
 
青木深/著
出版社名:平凡社
出版年月:2022年10月
ISBNコード:978-4-582-83909-8
税込価格:4,180円
頁数・縦:359p・20cm
 
 第二次大戦後、進駐軍や駐留軍の将兵たちの前で演芸を披露した芸能者たちの13年あまりの足跡をたどる。
 日本語が理解できない彼らに受ける芸とはなにか? 日本の寄席で主流を占める落語や漫才ではなく、色物や曲芸やダンス。そして英語の歌。それらを極めた芸人たちの素性とその芸を可能な限り掘り起こし、今に伝える。
 
【目次】
第1章 米軍慰問ショーの草創と活況
 米軍将兵を慰問する
 占領軍への芸能「提供」
 米軍慰問ショーの時空間
 米軍慰問市場の繁栄
第2章 進駐軍で色物を
 モノとひとの七変化
 進駐軍を笑わせる
 奇術で生きた戦後
第3章 軽業曲芸の世界
 めくるめく曲芸
 おどろき軽業ここにあり
第4章 歌舞音曲とアメリカ
 女と男のダンス
 アメリカを歌い奏でる
第5章 米軍慰問ショーが衰退して
 
【著者】
青木 深 (アオキ シン)
 1975年生まれ。都留文科大学教授。歴史人類学、ポピュラー音楽研究。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。著書に、『めぐりあうものたちの群像―戦後日本の米軍基地と音楽1945-1958』(大月書店、2013年、サントリー学芸賞受賞“社会・風俗部門”)など。
 
【抜書】
●USO(p14)
 United Service Organization。米軍における慰問演芸のうち、米軍人でないアメリカの芸能関係者を動員したショー。USOは、米国内外の米軍将兵に様々な娯楽を提供する非営利団体のこと。1941年に結成、現在も活動を続けている。マリリン・モンローやダニー・ケイなどが来日した。
 ほかに、米軍人自身が運営し出演する兵隊ショー(Soldier Show)がある。
 日本人による「進駐軍慰問」は、米軍が自前で賄う慰問の来日や製作と並行して始まった。
 
●三浦環(p17)
 日本人による慰問が正式に始まったのは、1945年10月2日、連合軍最高司令部訓令第90号「占領軍が必要とする物資およびサービス」の「サービス」全19項目中10番目に挙げられた「特別の娯楽(Special entertainment)」がきっかけ。その例として、「音楽、演劇、レスリングなど」が載っている。
 日本人による最初の占領軍慰問の上演記録は、10月10日、第一騎兵師団の将兵を対象として大蔵省の講堂で開かれた、オペラ歌手の三浦環のコンサートだった。10月11日付読売新聞に「米軍将兵慰安初の音楽会」と報じられた。
 
●席画(p78)
 注文に応じて即座に絵を描く技芸。近世の日本では広く親しまれていた。
 中でも「書画会」(書家や画家を料理屋に集めて席画や席書を催すイベント)は、幕末や明治前半に興行化して全盛期を迎え、ユーモラスに速筆で仕上げていく技芸は来日外国人を驚かせた。
 春田美樹や木川かえるは、一種の席画を演じていた。
 
●尾藤イサオ(p162)
 尾藤イサオ、1943年生まれ。もとは落語家で百面相を演じていた父・三代目松柳亭鶴枝〈しょうりゅうていかくし〉と母が戦後に亡くなったため、10歳で鏡味小鉄の内弟子となり、彼の一行に加わって「子供の曲芸」を演じていた。
 
●神田正輝(p242)
 神田正輝の母親は、旭輝子。『てる日くもる日ふれ愛家族』の著者。進駐軍慰問の踊り子だった。
 朱里みさをは、朱里エイコの母親。自伝『人生はザ・オーディション』。
 
(2023/2/20)NM
 
〈この本の詳細〉

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ: