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江戸で部屋さがし
 [歴史・地理・民俗]

江戸で部屋さがし (The New Fifties)
 
菊地ひと美/著者・絵
出版社名:講談社(The New Fifties)
出版年月:2022年5月
ISBNコード:978-4-06-517077-9
税込価格:2,200円
頁数・縦:127p・21cm
 
 江戸の住居と暮らしを、町家、武家に分けてイラストで紹介。貸家を探す三味線の師匠、参勤のお供で江戸に来た武士に、それぞれ大家さんと旗本の息子が江戸を案内するというストーリー仕立て。
 
【目次】
第1章 町人―江戸へ、菊香深川に着く
 裏長屋
 裏長屋の住人 職人
 裏長屋の住人 商家
 裏長屋の住人 自由人
 江戸の女たち
  ほか
第2章 武家―真二郎、江戸参勤
 直参と拝領屋敷
 下級武士の組屋敷
 中級武士・旗本の家
 武家屋敷の特色 座敷
 武家屋敷の特色 夫人棟と水廻り
  ほか
 
【著者】
菊地 ひと美 (キクチ ヒトミ)
 江戸衣装と暮らし研究家。衣装デザイナーを経て、早稲田大学の一般講座や江戸東京博物館で10年間学びつつ、著作活動(文と絵)に入る。2002年から始まった日本橋再開発に作品が起用された。2004年、国立劇場より制作依頼を受けて描いた『伝統芸能絵巻』全4巻(10メートル)は、海外2ヵ国の国立美術館(ローマ・ブダペスト)で3ヵ月間展覧。2008年には、丸善・丸の内本店にて同絵巻の国内初披露を含む個展を開催。現在は絵本を含む著作を中心に活動中。
 
【抜書】
●江戸の三男(p78)
 えどのさんおとこ。同心、鳶、力士。女性にもてた。
 同心は、身なりも良く粋であったため。茶の縞の着物に袴は付けず、黒紋付の羽織に足元は雪駄。雪駄は、畳表の草履で、裏に鋲が付くので歩くと「カチッ」という音がした。
 三十俵二人扶持だが、藩や商家から付け届けがあり、生活は楽だった。
 
●内職(p81)
 御家人(二百石未満の下級武士)は、俸禄が少ないために「内職」が許されていた。
 組屋敷ごとに専門職のように仕事を請け負っており、組ごとに「特産品」が有名になっていた。
 染井の植木、下谷の大番組の朝顔栽培、青山の鉄砲組の番傘・提灯、代々木や千駄ヶ谷の鈴虫、など。
 
●書院造り(p99)
 床の間、床脇の違い棚、付書院〈つけしょいん〉を備えた座敷。
 本床〈ほんどこ〉は、向かって左(庭や縁側がある)に付書院を置き、右に違い棚を設ける。右を貴しとする考えから。また、床脇の貴重品を外部から遠ざける。その逆が「逆床」。
 書院造りは、大名屋敷から中級の武家屋敷まで必ずあった。後に、町家の上層商家にも取り入れられていく。
 
●数寄屋(p102)
 江戸初期、殿様たちは、上屋敷に幕府が定めた「正式な書院造り」を設け、下屋敷(私邸)に自分の好みに変化させた書院造りを個々に創造した。これを「数寄屋」(主に室内)と呼ぶ。
 床の間……「正式」は、床の板地に欅の厚い一枚板、床柱に真四角で柾目の角材を用いた。「数寄屋風」は、畳床、木の皮をはいだままの自然木や丸太や、節のある木材や竹を使った柱、など。
 違い棚……「正式」なほうは簡素だが、「数寄屋風」はさまざまに変化させた複雑な形が多い。
 付書院……「正式」は廊下に文机が張り出した付書院、「数寄屋風」は張り出さない「平書院」。
 天井……「正式」は格子状の複雑な格天井〈ごうてんじょう〉、「数寄屋風」はもっと簡素で一般的な棹縁天井〈さおぶちてんじょう〉。
 壁……「正式」は帳付〈ちょうつけ〉壁(紙や布の上に障壁画を描いて壁にはめ込む豪華なもの)、「数寄屋風」は色のある土壁(赤みを持つ黄土や紅殻色など)。
 障子の桟……「正式」は簡素で伝統的な直線の桟、「数寄屋風」は桟の間隔の広狭を変えたり、斜めにしたり、裏側に縄を這わせたり。
 屋根……「正式」は殿舎なので瓦、「数寄屋風」は茅葺きや杮葺きにし、むくりと言われる曲面の屋根が多くを占めている。
 
●戸山下屋敷(p118)
 尾張藩の下屋敷。現在の早稲田戸山公園。
 屋敷内に「ニセの宿場町」があり、店まで作り、来客の武士たちが町人の真似をして買い物をしたりした。店側の人は、園内の農地を耕しに来る近在の農民がつとめた。
 
●江戸勤番(p120)
 定府〈じょうふ〉……江戸に十年など長期間とどまって帰国しない。江戸家老、留守居役、など。
 江戸詰め……藩主に従って1年間勤務し、後に帰国。妻子は国元、単身赴任。
 立ち返り……藩主の参勤について来て江戸に到着したら、すぐに帰国。
 
(2023/2/27)NM
 
〈この本の詳細〉


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