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御成敗式目 鎌倉武士の法と生活
 [歴史・地理・民俗]

御成敗式目 鎌倉武士の法と生活 (中公新書)
 
佐藤雄基/著
出版社名:中央公論新社(中公新書 2761)
出版年月:2023年7月
ISBNコード:978-4-12-102761-0
税込価格:1,012円
頁数・縦:278p・18cm
 
 1232年(貞永元年)に、執権・北条泰時によって制定された「御成敗式目(貞永式目)」をひもとく。
 中世鎌倉時代の社会・生活の一端がうかがえて興味深い。著者も、「本書は式目を通して、中世がどのような時代だったのか、そして中世の歴史が、現在に至るまでどのように受容されてきたのかを考えてきた」(p.247)と述べている。
 
【目次】
第1章 中世の「国のかたち」
第2章 「有名な法」の誕生
第3章 「道理」の法
第4章 五十一箇条のかたち
第5章 式目は「分かりやすい」のか
第6章 女性と「もののもどり」
第7章 庶民と撫民
第8章 裁判のしくみ
第9章 天下一同の法へ
第10章 「古典」になる
第11章 現代に生きる式目
 
【著者】
佐藤 雄基 (サトウ ユウキ)
 1981年(昭和56年)、神奈川県に生まれる。東京大学文学部卒業。同大学大学院人文社会系研究科博士課程を修了し、博士(文学)を取得。日本学術振興会特別研究員(PD)などを経て、立教大学文学部教授。専門分野は日本中世史、近代史学史。
 
【抜書】
●権門体制論、東国国家論(pⅲ)
 鎌倉時代の国のかたちとして、大きく二つの学説がある。いずれも、「鎌倉幕府は日本国全体を支配する権力ではない」という事実認識は一致していた。
 権門体制論……幕府は中世の支配層の一部分でしかない。荘園制に基づいて民衆を支配するという点では武家(幕府)や公家(貴族)、大寺社という諸権力は共通しており、そのうち鎌倉幕府は軍事と治安維持を担う権門として天皇のもとで国家権力の一部を構成していた。
 東国国家論……幕府は関東に独自の基盤を持ち、京都の朝廷から半独立的な状態にあった。
 
●地頭(p7)
 鎌倉幕府が、守護とは別に国内の荘園や公領(国衙領)ごとに設置したポスト。
 御家人は、幕府から「御恩」として荘園・公領の地頭の地位を与えられ、軍役などの「奉公」を果たしていた。武士たちは、荘園・公領ごとに地頭のような現地管理者の職〈しき〉を持つことで、その荘園・公領に所領を確保していた。
 
●家(p17)
 鎌倉時代、「職」を所領とし、財産相続することによって「家」が成立した。「家」とは、財産(家産)と仕事(家業)が「職」とセットになった状況の下、それらを親から子に継承していくことを目的とした経営母体を指す。研究上は「中世のイエ」などと言われる。
 中世社会とは、荘園制とそれを基盤にした「職」(仕事と利権)と「家」、これらを基盤として、多様な勢力が緩やかに結びついて運営されている社会であった。
 
●格式(p57)
 きゃくしき。
 律令体制の下では、膨大な官僚制度を運用するため、また、新しく生じる問題に対応するため、個別の単行法令が出されたり、役所の部署ごとの施行細則の先例・ルールが形成されていった。
 律令は8世紀冒頭に導入されるが、格式が整備されたのは平安前期(9世紀)。弘仁、貞観、延喜の三代格式が広く知られている。特に延喜式(927年、延長5年)。式の集大成として百科便覧的な趣を持ち、中世の朝廷でも儀式や年中行事の典拠として尊重されていた。
 格……個別の単行法令を集積・整備したもの。
 式……役所ごとに施行細則となる先例・マニュアルを集積したもの。
 
●養老律令(p60)
 中国の律令は、皇帝の代替わりや王朝ごとに新たに作り直されていた。
 日本では、757年(天平宝字元年)に養老律令が施行されたのちは、新たに律令が作り直されることはなかった。
 
●辻捕(p151)
 つじどり。
 道路の辻において女性を捕まえて強姦におよぶ行為。
 
●塵芥集(p212)
 戦国大名の伊達稙宗〈たねむね〉(伊達政宗の曽祖父)による分国法。御成敗式目を意識して作られた。稙宗は、室町幕府に莫大な贈り物をして、陸奥国守護職に任じられた。
 『今川仮名目録』(今川氏)、『甲州法度』(武田氏)も、御成敗式目を意識して作られた分国法。
 
●封建(p234)
 封建の意味。
 (1)古代中国において、領地を一族・家臣に与え、統治を委ねる方式。「郡県」(中央から官僚を派遣して統治)と対になる。
 (2)中世ヨーロッパにおいて主君と家臣が土地を媒介にして主従関係を結ぶ仕組み。英語でfeudalism。「封建制」という訳語をあてた。法制史的用例。
 (3)マルクス主義歴史学において、土地に緊縛された農奴支配に基づく領主制を指す。社会経済史的用例。
 
(2023/9/7)NM
 
〈この本の詳細〉


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