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中世ヨーロッパ ファクトとフィクション
 [歴史・地理・民俗]

  中世ヨーロッパ: ファクトとフィクション
ウィンストン・ブラック/著 大貫俊夫/監訳
出版社名:平凡社
出版年月:2021年4月
ISBNコード:978-4-582-44713-2
税込価格:3,520円
頁数・縦:380p・19cm
 
 ヨーロッパの中世とは、概ね5世紀から15世紀までの千年間を指すらしい。この時代は「暗黒時代」とみなされ、知性に欠け、教会支配による迷信と不潔が支配した時代だったと一般に捉えられている。
 しかし、その見方自体が「迷信」であり、「神話」にすぎない。
 本書では、そんな11の固定観念を取り上げ、その由来と現実の姿を「一次資料」を基に描き出す。
 中世に対する誤解の原因はいろいろと考えられるが、一つの大きな理由は、プロテスタントにあるという。カトリック教会が支配した時代を貶めるために、「暗黒の中世」を喧伝したのだという。また、「暗黒の中世」に関する描写の多くは15世紀以下の時代のもので、その時代に特異的に発生したものも少なくない。たとえば、ペスト医師の嘴型マスクの画は、17世紀が初出だという。それが中世全体に敷衍されて観念されてしまう。
 つまるところ、中世の「暗黒」を流布する人々は、中世の何たるかをほとんど知らない人たちばかりなのであろう。自分も同様である。その蒙昧を啓かせてくれる、格好の書である。
 
【目次】
第1章 中世は暗黒時代だった
第2章 中世の人々は地球は平らだと思っていた
第3章 農民は風呂に入ったことがなく、腐った肉を食べていた
第4章 人々は紀元千年を恐れていた
第5章 中世の戦争は馬に乗った騎士が戦っていた
第6章 中世の教会は科学を抑圧していた
第7章 一二一二年、何千人もの子どもたちが十字軍遠征に出立し、そして死んだ
第8章 ヨハンナという名の女教皇がいた
第9章 中世の医学は迷信にすぎなかった
第10章 中世の人々は魔女を信じ、火あぶりにした
第11章 ペスト医師のマスクと「バラのまわりを輪になって」は黒死病から生まれた
 
【著者】
ブラック,ウィンストン (Black, Winston)
 中世史研究者。中世科学史・医学史が専門で、ヨーロッパと地中海世界の活発な交渉によって発展した中世の薬学と薬草学(本草学)を研究。
 
大貫 俊夫 (オオヌキ トシオ)
 1978年生まれ。トリーア大学(ドイツ)第三専門分野博士課程修了。Dr.phil.。東京都立大学人文社会学部准教授。西洋中世史(とくに修道会史、中世ドイツ史)。キリスト教修道制が中世ヨーロッパの国制・法・社会・経済などの諸分野に与えた影響とその史的意義を研究。
 
【抜書】
●暗黒時代(p26)
 「暗黒時代(saeculum obscurum)」という語が中世を指して用いられるようになったのは17世紀。
 カトリックの学者でサンティ・ネレオ・エ・アキレオ協会の枢機卿だったカエサル・バロニウス(1538-1607)が、900年頃から1046年までの期間のみを指す用語として使った。
 この期間は、教会と教皇権にとってひときわ悪い時代で、文書もほとんど作成されず、また、伝来していない。
 バロニウスの「暗黒時代」は、中世全体、すなわちカトリック一色だった時代を非難する意図はなかったが、急速に広がり、ヨーロッパ史においてカトリック教会が支配的だった時代全体に適用されるようになった。
 
●スペイン暦(p134)
 中世スペインのキリスト教徒が用いていた暦。中性の終わりまでヨーロッパの一部で使われ続けた。現西暦の紀元前38年からはじまる。
 
(2021/9/14)KG
 
〈この本の詳細〉


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