SSブログ

こんな政権なら乗れる
 [社会・政治・時事]

こんな政権なら乗れる (朝日新書)
 
中島岳志/著 保坂展人/著
出版社名:朝日新聞出版(朝日新書  826)
出版年月:2021年7月
ISBNコード:978-4-02-295134-2
税込価格:869円
頁数・縦:221p・18cm
 
 中島岳志と保坂展人との対談。民主主義、地方自治に関して語り合う。とくに、区長として保坂が実現した世田谷区政について多くを語る。「世田谷ヤネルギー」、空き家対策など、先進的な取り組みが目を引く。
 
【目次】
第1章 今の野党に何が足りないのか
 もう一隻の船をうかべる
 リスクの社会化とリベラル
  ほか
第2章 主体を引き出す民主主義
 教育ジャーナリストから衆議院議員へ
 与党性と野党性が共存している
  ほか
第3章 「くらし」と「いのち」を守る
 福祉のワンストップサービス
 「たらい回し」は気持ちが折れる
  ほか
第4章 これからの日本へ
 コロナ対策から見えた日本の脆弱性
 PCR検査を増やす ほか
 
【著者】
中島 岳志 (ナカジマ タケシ)
 1975年大阪生まれ。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て現職。2005年、『中村屋のボース』で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞受賞。
 
保坂 展人 (ホサカ ノブト)
 1955年仙台市生まれ。東京都世田谷区長。都立新宿高校定時制中退。中学校卒業時の「内申書」をめぐり内申書裁判の原告となり、そこから教育問題を中心に取材するジャーナリストになる。1996年、衆議院議員初当選。2009年まで3期11年務める。社民党副幹事長、総務省顧問を歴任。11年、無所属で世田谷区長選挙で初当選。19年、3選される。
 
【抜書】
●世田谷ヤネルギー(p90、保坂)
 区内で自然エネルギーを作り、地産地消するための政策。ソーラーパネルを希望する民家に設置する。
 150~200万円の設置費用を、一括発注をかけることによって4割くらい安くした。2012年当時、220件近い家に設置された。
 
●みうら発電所(p91、保坂)
 世田谷区営の太陽光発電所。
 神奈川県三浦海岸にあった区立三浦健康学園が廃止されて売却しようとしていたが、接続道路の狭さや建築条件等の問題で長らく売れなかった。
 南斜面の日当たりの良いところだったので、メガ発電の半分くらいの発電所を作り、売電して区民に使ってもらっている。
 
●ボンディングとブリッジング(p107、中島)
 ソーシャル・キャピタルという考え方に基づく。共同性をリニューアルしなくてはならない。アメリカの政治学者R・D・パットナム『孤独なボウリング』。
 ボンディング……強い絆、結束力を持つ古い共同体。ボンディングにはどうしても排除の論理が働いてしまう。ヒエラルキーを順守するような人たち、「話のわかる人」は包摂されるが、異を唱えるような人は排除される。インクルージョンの中にエクスクルージョンが働く。
 ブリッジング……外に向けてはしごを架け、出入りが可能であるというネットワーク型のつながり。現代社会では、もう一つの絆、「ブリッジング」が重要。
 〔私はけっして町内会が悪いと言っているのではないのですが、町内会「しかない」社会は悪い。町内会「もある」社会というのがよいということです。〕(中島)
 
●時間(p116、中島)
〔 私は民主主義にとって、「時間」という問題が重要だと思っています。いまはなんでもかんでも「スピード感」が重視され、ビジネスや政治の世界では、即断即決して解決するのがリーダーシップとといわれています。しかし、それって逆なんじゃないかと思います。民主主義にとってのリーダーシップは、時間をかける忍耐力だと思います。そうでないとかならず誰かを切り落とす。一方の意見を無視する。そして、一方の者だけの利益が優先される。民主主義にはまどろっこしさが重要です。これを世界中がどんどん忘れていっている。なかなか決まらないもどかしさの中に、民主主義の大切な「熟議」や「合意形成」の要素があるのです。〕
 
●みなし仮設(p136、保坂)
 東日本大震災の際、空き家・空き室などを区民から募集して、「みなし仮設」として避難者に提供した。
 区民に呼びかけると、200人くらいのオーナーから物件提供の申し込みがあった。
 20~25万円で流通する物件を、国の基準値である7万5千円に抑えて提供した。
 〔この時にわかったのは、不動産物件を持つ方でも、経済的な収入になるというよりも、社会に喜ばれることをしたいと思っている方が多くいらっしゃるということでした。〕
 
●子供の声(p156、保坂)
 〔ドイツでは、かつて騒音規制が非常に厳しく、ハンブルクの幼稚園がうるさいという訴訟で裁判所から閉鎖命令(2008年10月)を受けたことがありました。この時、ドイツでは親が座り込んで「子どもの声は騒音じゃない」「未来を告げる鐘の音なんだ」と主張した。これを受けて、ベルリン市が条例で、環境騒音から子どもに関わる音を除外しました(10年)。施設の扉が閉まる音とか、足音とか、声などいろいろありますよね。これは騒音ではないと認定し、条例を改正しました。その後、連邦法(11年)にも反映され、ドイツにおいては子どもの声を騒音から除外していくんですね。以降は、騒音規制違反で提訴できないようになっていった。〕
 
●統治機構(p221、保坂)
〔 今日、統治機構を権威主義化させ、異議を封じる言論統制を強めようという動きが活発になろうとしている。私は、「強いリーダーシップ」という言葉に空疎な危うさを感じる。まず、統治機構に求められるのは一方的な決断ではなく、「事態を正確に読み解く力」「現場からの声を傾聴する力」「自らと異なる主張や分析が正しければ受け入れる力」であり、その上での決断なのだ。私たちは絶望や無力感にとらわれがちだが、誰もが変革への熱意を捨ててあきらめた時は、さらに政治や社会の劣化はとめどなく進み奈落へと向かう。〕
 
(2021/11/17)NM
 
〈この本の詳細〉


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。