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弁護士のすゝめ 最強資格のリアル。そして令和版司法改革へ
 [社会・政治・時事]

弁護士のすゝめ─最強資格のリアル。そして令和版司法改革へ─
 
宮島渉/著 多田猛/著
出版社名:民事法研究会
出版年月:2022年6月
ISBNコード:978-4-86556-509-6
税込価格:1,540円
頁数・縦:303p・19cm
 
 2004年に法科大学院が創設され、2006年から新司法試験が実施されているが、合格者数は当初の3,000人に遠く及ばず、弁護士は不足している……。
 そう、これまで喧伝されてきた「食えない弁護士」というのは嘘っぱちで、もっと弁護士を増やし、社会のあらゆる場面で必要となる弁護士の需要に応えなければならない。それが本書の主張である。弁護士の魅力を語り、弁護士が少なすぎることによる日本の問題点を論じる。
 
【目次】
第1章 今、弁護士が狙い目!?
第2章 売手市場で魅力的な弁護士業界の今
第3章 広がる活動領域!活躍する弁護士たち
第4章 コスパ最強!弁護士への道
第5章 合格率を下げるな!合格者数を増やせ!
第6章 法曹養成制度の課題と改革案
第7章 世界に後れる日本の司法を変えよう―令和版司法制度改革をめざして
 
【著者】
宮島 渉 (ミヤジマ ワタル)
 法律事務所フロンティア・ロー代表弁護士。働きながら夜間のロースクール(大宮法科大学院)に通って弁護士になる。モットーは、「勇気・優しい心・柔らかい頭」。世界に後れる日本の司法を変えるため「ロースクールと法曹の未来を創る会」と「久保利塾」の事務局長としても活動。
 
多田 猛 (タダ タケシ)
 イーリス総合法律事務所代表弁護士。弁護士として、スタートアップ・中小企業の支援を行う中、自らも起業。起業家弁護士として活躍中。企業と弁護士をつなげるリーガル事業に携っている。司法制度改革・法曹養成のための活動は、ライフワークとしており、「ロースクールと法曹の未来を創る会」の事務局次長を創設以来務める。
 
【抜書】
●明石市、姫路市(p36)
 2012年、全国で初めて、明石市では5年の任期付き職員として弁護士職員の採用を開始した。現在では、正規職員としても弁護士枠を設けている。
〔 明石市の泉房穂市長は、大学卒業後、テレビ局のディレクターや国会議員秘書を経て弁護士資格を取得。衆議院議員も2年間経験している。採用後に弁護士に担当させる業務の説明会を自ら開催。同市における弁護士の配属先は幅広く、採用されると議会にも出席し、市の政策立案にも関与する。〕
 採用された弁護士は、泉市長の重要な政策を支えている。
 姫路市では、総務局内にある法制課で二人の弁護士を法務専門家として採用している。法制課の総勢は8名。
 
●ブティック系(p40)
 ブティック系法律事務所……一般に、少数精鋭で、特定の分野の企業法務に特化した法律事務所。
 
●魅力にあふれた仕事(p76)
〔 ただ、稼げる、稼げないということ以上に重要なことがある。それは、弁護士というプロフェッションゆえの魅力だ。弁護士という仕事は、社会から頼りにされ、世の中のため、人のためにダイレクトに役立つことができ、しかもある程度は稼げる(才覚があればものすごく稼げる)。弁護士は魅力に溢れた職業だということを、若い人たちに強くアピールしたい。〕
 
●過疎地型公設事務所(p97)
 日弁連が設立した基金で資金調達をし、その資金で弁護士過疎地に設置する事務所。
 1999年に基金が設立され、2000年6月、第1号の「石見ひまわり基金法律事務所」が島根県浜田市に開設された。
 2001年4月には、第2号事務所として「石垣ひまわり基金法律事務所」が、第3号として「紋別ひまわり基金法律事務所」が開設された。
 公設事務所……日弁連や所在地を管轄する地域弁護士会の支援のもと、弁護士自身が経営する。「過疎地型」では、開設資金の援助を受けられるほか、年間の手取りが720万円に届かなければ、差額分を補償してもらえる。着任する弁護士は日弁連が募集し、任期は概ね2~3年、再任・定着も妨げない。必ず「ひまわり基金」という名称が入る。「都市型」は、各地の単位弁護士会が基金を設けて設置、法テラスや過疎地型公設事務所で働く弁護士の養成が目的。一般の法律事務所同様、法律相談や事件の受任も行い、事件処理を通じて若手の養成を行う。全国に11か所しかなく、うち5か所は東京の三つの弁護士会が設置したもの。(p110)
 
●法テラス(p110)
 広く社会に法の支配を行き渡らせることを目的に、都市部、地方を問わず全国に設置されている。働く弁護士は給与制で雇われている。法務省の外郭団体が運営。
 
●10万人(p261)
 日本の弁護士人口は約4万3000人(2021年)。直近2年の司法試験合格者数は1500人未満。
 フランスの弁護士は約7万人。先進国の中では少ない。総人口は6500万人で日本の52%。
 せめてフランス並みにするには、日本も10万人が必要。
 
●ルールメーカー(p264)
 日本でも世界に通用するルールメーカーが必要。そのためにも、弁護士を増やすべき。
 〔ルールメーカーとしての資質がある職業は弁護士だ。何しろ「法律=ルール」の使い方を知っているのだから。未知の法律やルールがあったとしても、リーガルマインドをもっているため、それらがどんな趣旨で何を規制しようとしているかなど、一定水準の「土地勘」がある。〕
〔 世界で活躍する弁護士、世界でルールを作る弁護士、ルールメーカーたりうる人をサポートする弁護士をもっと育てなければ、日本はいつまでも政治、外交、経済、スポーツ、ありとあらゆる場面で、ルールを守る側に甘んじ続けなければならなくなる。〕
 
●ディスカバリー(p284)
 米国には、訴訟前に相手にすべての証拠を徹底的に開示させる「ディスカバリー」という証拠開示制度がある。証拠を隠すと、法廷侮辱罪などの重い制裁が科され、不利な判決が言い渡されることになる。
 日本の民事裁判では、事実上、自分に不利な証拠を隠すことが可能になっている。一応、裁判所が証拠種類の提出を命じる制度(文書提出命令)や、虚偽の証言に対する偽証罪(刑事罰)や過料といった制裁はあるが、十分に機能していない。
 文書提出命令は、事前に書類を特定する必要があるため、相手がどんな書類を隠し持っているか分からないと使えないし、例外規定が多く、申し立てをしても命令自体が出ない場合も多い。
 虚偽の証言も、証明が難しいうえ、実際に偽証罪や過料の制裁が下されるケースはごく稀。
 
●期間制限訴訟(p287)
 法制審議会は、新たな訴訟手続きとして、「期間制限訴訟」という新たな手続きの創設を提示し、2025年度の施行を目指している。
 当事者の申し出や同意に基づき、民事裁判の審理を6カ月以内に終わらせ、その後1カ月以内に判決を言い渡す。「申述に基づく法定審理期間訴訟手続」という仮称で、民事訴訟法の改正案が、現在、国会で審議されている。
 
●法曹一元(p292)
 米国や英国などでは、弁護士経験者のなかから裁判官を命名することになっている。「法曹一元」と呼ばれている。裁判官になった人が、その経験や名声を活かして再び弁護士として活躍する場合も多い。
 日本は、司法修習を修了した直後の者の中から裁判官が任命され、定年退官するまで勤める。キャリア裁判官制度。浮世離れした裁判官となりやすい。弁護士任官もあるが、その数は少なく、常勤の任官者については、年にわずか数名程度しか採用されていない。
 
【ツッコミ処】
・税理士、弁理士(p18)
 弁護士は、法廷業務のすべてができる唯一の資格であると同時に、登録さえすれば税理士、司法書士、社会保険労務士などの士業の業務もできてしまう。ある意味最強の資格だ。〕
  ↓
 〔弁護士は、税理士や弁理士の登録ができる。司法書士や行政書士の業務は弁護士業務に含まれるから、それらもできる。〕(p147)とあるのだが、登録しなければならないのは税理士、弁理士のみ? 司法書士、行政書士は登録不要? では、社会保険労務士は??
 どうやら行政書士は、登録が必要らしい。
 「行政書士試験研究センターが毎年1回行う行政書士試験に合格した者のほか、弁護士、公認会計士、弁理士、税理士の資格を有する者、および公務員(あるいは特定独立行政法人や特定地方独立行政法人の役員または職員)として、高卒であれば通算17年間以上行政事務を担当した者は行政書士となる資格を有するが、開業するには、開業する都道府県の行政書士会を経由して日本行政書士会連合会に登録しなければならない。」
"行政書士", 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2023-02-11)
 
●プロボノ活動(p99)
 「プロボノ活動」とは?
 残念ながら、ジャパンナレッジ( https://japanknowledge.com  )にも立項されていなかった。専門用語や最新用語には、説明を付けてほしいものだ。
 
(2023/2/11)NM
 
〈この本の詳細〉

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