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越境と冒険の人類史 宇宙を目指すことを宿命づけられた人類の物語
 [歴史・地理・民俗]

越境と冒険の人類史: 宇宙を目指すことを宿命づけられた人類の物語
 
アンドリュー・レーダー/著 松本裕/訳
出版社名:草思社
出版年月:2022年4月
ISBNコード:978-4-7942-2578-8
税込価格:3,850円
頁数・縦:494p・20cm
 
 人類はアフリカを出て、長い旅の果てに地球上のほぼすべての土地を征服した。その続きは宇宙にへの旅である。
 
【目次】
第1部 起源
 ゆりかごを出て
 初期の放浪
 海の人々
 越境するギリシャ・ローマ
第2部 世界の再発見
 北からやってきた「蛮族」たち
 初期の遭遇
 もう一つの地中海
 中国の大航海時代
 インドへの航路
 略奪と黄金
 世界一周
第3部 近代
 貿易の帝国
 開かれる大陸
 科学のフロンティア
 氷と雪の大地
 空へ
 宇宙競争
 ロボットの目を通じて見た世界
第4部 『スタートレック』への道
 未来へ
 火星への道
 宇宙旅行者への道
 星間を旅する
 異世界の生命
 最終目的地
 
【著者】
レーダー,アンドリュー (Rader, Andrew)
 SpaceXでミッション・マネジャーを務める航空宇宙工学者。マサチューセッツ工科大学でPh.D.を取得(宇宙工学)したのち、いくつかの宇宙関連企業を経て現職。
松本 裕 (マツモト ユウ)
 翻訳家。訳書多数。
 
【抜書】
●フェニキア人(p61)
 古代のフェニキア人は、コロンブスが乗った最大の船「サンタ・マリア号」より大きな450トンに船をつくったと言われている。
 竜骨、ロープと滑車で上げる帆、防水のコーキングをほどこした甲板、船体が大きく膨らんだ多層構造の船。
 
●つるつるの顔(p79)
〔 アレクサンドロス以前の男たちは、顎鬚をたくわえているのが普通だった。だがアレクサンドロスはきれいに鬚を剃っていて、その嗜好が帝国中の男たちの間で流行し、ローマ人にまで真似されるようになる。つるつるの顔を男らしいものにしたのはアレクサンドロスだと言っても過言ではない。〕
 
●ローマ海軍(p94)
 ローマがポエニ戦争でカルタゴに勝てたのは、イタリア海岸沖で沈んだカルタゴの船を研究することで、船の構造を学んだから。
 たった9年でローマは海軍を設立し、シチリアのエクノモス岬沖で300艘からなるカルタゴの船隊を破る。
 やがてローマは地中海の海岸線すべてを支配し、海は「マーレ・ノストラム(我らの海)」とも呼ばれた。
 
●ランス・オ・メドー(p122)
 1960年代、ノルウェー人考古学者ヘルゲとアン・イングスタッドが、ニューファンドランドの北端沿いにあるランス・オ・メドーで、ノルド人居住区の遺跡を発見した。最大100人は住民がいたと思われる。AD1000年頃の遺跡。
 木枠を芝で覆った建物が数十。縦30m横15mの集会所。小さな作業場や住居が入植地を埋め尽くし、鉄の鉱滓が残る鍛冶場、鋸や木片が残る木工所、鉄鋲が残る船の修理工場もあった。
 北欧からアメリカ大陸への初期の移住の可能性。
 
●白い神の神話(p142)
 コルテスと部下たちは、自分たちがメキシコに上陸したまさにその年に再来が予言されていたケツァルコアトル神だとアステカ人に思われたと伝えている。アステカ暦1リードの日、彼らの365日暦と265暦が重なる日(52年ごとに訪れる)。
 ペルーでは、ピサロと仲間たちが同じように、インカ人によってヴィラコチャ神の再来だと思われたと報告している。
 ケツァルコアトル(アステカの神)とヴィラコチャ(インカの神)の特徴はとても似ている。
 背が高く、顎鬚を蓄え、肌は白く、眼は青く、広い海の向こうから戻ると伝えられていた。バイキングの外見的特徴に一致する。
 
●スリヴィジャヤ、マジャパヒト(p153)
 7世紀にインドネシアに興った、仏教徒を主とする帝国。この頃、スパイスに対する需要が増加した。
 ジャワ島のボロブドゥール寺院。仏教の宇宙論(宇宙の誕生、生涯、そして死)を描いた2672面の壁画レリーフが有名。
 やがてスリヴィジャヤは衰退し、マジャパヒトに取って代わられた。仏教とヒンドゥー教の帝国。東南アジア史上最大の帝国。近代インドネシアの境界線を定める役割を果たした。
 1292年、フビライ・ハーンがジャワに対して挨拶に来るようにと「招待」する使節を送った。ジャワはこれを拒絶。フビライは1,000艘からなる船団でジャワへ侵攻。マジャパヒトは当初モンゴルを手助けし、その後、ジャワの支配権を掌中に収めるためにモンゴルに急襲を仕掛けた。
 その後、アラブの商人によってもたらされたイスラム教がマジャパヒト中に広まる。15世紀(?)、シンガプーラ、マレーシア、スマトラの新たなイスラム教支配者たちがマジャパヒトの領地のほとんどを蹂躙。1世紀後には、わずかに残った土地もポルトガルとオランダに奪われた。
 
●マンサ・ムーサ(p157)
 マリ帝国の王。史上最も裕福な人物とみなされている。インフレ調整してもなお、ジェフ・ベソスの3倍の金持ちだったと推定できる。
 1325年、マンサ・ムーサがメッカに巡礼に出た際、上質な絹の衣服に身を包んだ1万2000人の奴隷に加え、彼が通る道筋の貨幣価値を以後10年にわたって下落させるのに十分なほどの黄金を積んだラクダの隊列を伴っていた。
 
●スパイス(p162)
〔 いまやどこのスーパーでも数ドルで買える日常使いのスパイスが、かつて世界経済を支配し、国の勃興に寄与していたというのは奇妙に思える。なぜスパイスはそれほど重要だったのだろう。じつは、よく言われているように腐った肉の味をごまかすためではない。
 それは主として威信の問題だったのだ。世界の忘れ去られた「端っこ」における、単調でひっそりとした中世の生活がその背景にあった。エキゾチックな食事を提供できるだけの財力を持つヨーロッパの貴族たちは、スパイスのおかげで一時的にせよ過去の栄光の記憶を呼び覚ますことができた。スパイスによって、ギリシャ人やローマ人が贅沢の極みを尽くし、アジアの帝国を蹂躙し、世界の舞台の中心に華々しく立っていた時代を思い出せるのだ。
 中世ヨーロッパの料理は、今日の水準からすると控えめに言っても奇妙奇天烈だった。レシピを見ると、手に入るスパイスはなんでも混ぜてしまっている。現代人の舌には決して合わないような組み合わせ方だ。スパイスの種類は幅広く、現代人がよく知っているものからエキゾチックな「ミイラのスパイス」(エジプトのミイラを粉に挽いたもので、治療薬としての効果があると信じられていた)まであった。塩味と甘味はメインコースとデザートに区別されることなく随時供されていた。〕
 
●ジョン・マンデヴィル(p183)
 『東方旅行記』の作者。14世紀の半ばから後半に広く出回った物語。怪物満載の世界を描いている。
 犬の頭部をもつ人間、猛烈な女戦士が支配するアマゾン、象をも獲物にする巨大な鳥、ダイヤモンドが生える畑、コショウの木が茂る森、若返りの泉、500年ごとに自らを焼き殺して生まれ変わるエジプトの鳥フェニックス。
〔 これらの物語は今では明らかにファンタジーだと思えるが、未知の世界に興味津々だった当時のヨーロッパ人には、文字どおり真実として受けとめられていた。実際、コロンブスは新世界への旅に出る際、『東方見聞録』に加えてこのマンデヴィルの本も携えて行っている。〕
 マンデヴィルは英国騎士とされていたが、おそらくは架空の人物。『東方旅行記』は、フランス人作家が又聞きと創作に基づいて書いたと考えられる。
 
●ポルトゥ・カーレ(p203)
 ポルトガルが独立したのは1139年。
 ローマ時代以来の港町ポルトゥ・カーレで野心的な君主によって独立が宣言された。この町の名前が、後に新たな国名となる。
 ポルトゥ・カーレは現在ポルトという名に変わり、甘いポートワインで知られるポルトガル第二の都市。
 
●マデイラ(p205)
 1420年、ポルトガルのエンリケ王子が、ポルトガル初の海外植民地として、ポルト・サント島とマデイラ島の所有権を主張した。ギリシャ人やローマ人には知られていたが、中世のヨーロッパ人にとっては新発見の島々。
 マデイラは大西洋の主要な中継地点となり、そしてヨーロッパ初の植民地実験の場ともなった。気候はサトウキビに適しており、1452年には農園のために捕らえられたアフリカ人が到着した。奴隷貿易幕開けの瞬間。
 のちに農園はブラジルに移され、現在、マデイラ酒の生産地となっている。
 
●パルマレス(p280)
 最大の奴隷保有国だったブラジルには、アフリカ系自由民コミュニティが数多く存在した。
 いくつかの自由共同体は、アメリカ大陸のなかでアフリカ人の王国へと成長する。
 長く続いたのはパルマレス。1694年、首都がポルトガル軍によって壊滅させられるまで、1世紀近く続いた。全盛期には1万を超える自由共同体を支えており、コンゴの貴族の血を引くズンビ王が治めていた。
 
●エンケラドス(p426)
 土星の衛星。宇宙に向かって間欠泉を噴出し、それが凍って霧状の結晶になる。NASAの「カッシーニ」はこのプリュームの中から塩を採取し、地球の海に似た、暖かな表面下の貯水池の存在を示唆した。
 太陽系で表面下に水をたたえた星が少なくとも10はあると考えられている。
 火星、エウロパ、ガニメデ、カリスト(以上、木星の衛星)、エンケラドス、タイタン、ミマス(以上、土星の衛星)、トリトン(海王星の衛星)、ケレス(準惑星)、冥王星。
 
(2023/4/16)NM
 
〈この本の詳細〉


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