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女ことばってなんなのかしら? 「性別の美学」の日本語
 [社会・政治・時事]

女ことばってなんなのかしら?: 「性別の美学」の日本語 (河出新書 063)
 
平野卿子/著
出版社名:河出書房新社(河出新書063)
出版年月:2023年5月
ISBNコード:978-4-309-63162-2
税込価格:946円
頁数・縦:213p・18cm
 
 日本語特有の「女言葉」を通して、日本のジェンダー格差を考える。
 
【目次】
第1章 女ことばは「性別の美学」の申し子
第2章 人称と性
第3章 日本語ってどんなことば?
第4章 西洋語の場合
第5章 日本語にちりばめられた性差別
第6章 女を縛る魔法のことば
第7章 女ことばは生き残るか
 
【著者】
平野 卿子 (ヒラノ キョウコ)
 1945年、横浜に生まれ、東京で育つ。翻訳家として小説、児童書、ノンフィクションなど幅広い分野で活躍。お茶の水女子大学卒業後、ドイツのテュービンゲン大学、アメリカのニューヨーク大学に留学。ヴァルター・メアス『キャプテン・ブルーベアの13と1/2の人生』で第9回レッシング翻訳賞を受賞。
 
【抜書】
●明治時代(p18)
〔 いま、私たちが「女言葉」と認識している「だわ」「のよ」といった言葉づかいの起源は、明治時代の女学生の話し言葉です。ただ、当時は正しい日本語とは扱われず「良妻賢母には似合わない」「下品で乱れた言葉」だと、さんざん非難されていたのです。女言葉が正当な日本語に位置づけられたのは、朝鮮半島や台湾などの植民地でとられた同化政策の中でのことです。「女と男で異なる言葉遣いをする」のが日本語のすばらしさであるとされ、多様な言葉づかいの一部だけを「女言葉として語る」ことで、概念が生み出されました。
 戦後は日本のプライドを取り戻すため、女言葉はさらに称賛されるようになります。その中で、「女学生の流行り言葉」だったはずが、起源を捏造され、「山の手の中流以上の良家のお嬢様の言葉」だったと喧伝されるようになります。日本女性は丁寧で控えめで、上品だという「女らしさ」と結びつけられ、「女ならば女言葉を使うはずだ」という意識も生まれました。〕
 言語学者の中村桃子、『朝日新聞』(2021年11月13日)より。
 
●男女棲み分け社会(p42)
〔 西洋諸国が「カップル社会」なら、日本はさしずめ「男女棲み分け社会」といえるでしょう。けれども根底にある考えは同じです。どちらにも「女は愚かで弱い」という大前提があり、それが西洋では「だから、俺のそばを離れるな」となり、日本では「だから、引っ込んでろ」となっただけのこと。〕
 
●日本のジェンダー格差(p110)
 日本にジェンダー格差がなくならない理由。
 (1)人生のあらゆる局面において、日本人には日本独自の「性別の美学」が深く刷り込まれている。
 (2)参政権や婚姻の自由をはじめ、70年以上前から名目の上では両性がいちおう平等である。ただし、戦後の民主憲法によって与えられたもので、女性たちが勝ち取ったものではない。
 (3)日本の女性には、西洋の女性にはない「自由」があったこと。
  1.行動の自由……カップル社会の西洋とは異なり、日本では女性が一人で、あるいは「女子会」など複数で自由に行動できる。
  2.お金を使う自由……家計を管理しているのは、多くが妻であった。
 日本の女性は、日々の暮らしにおいて「そこそこ」自由だった。西洋の女性たちのような、平等に対する切羽詰まった欲求を感じることが少なかった。
 しかし、日本の男女格差がなくならない最大の理由は、既得権益をがっちり握ったまま手放さないホモソーシャルな社会構造にある。
 
●声の性差(p168)
〔 男の子は自分より年長の男性を真似ようとして、無意識に必要以上に低い声を出す。同様に女の子は、生物学的に決まっている以上に高い音域で話をする、そのほうが女性らしいと無意識に学習しているのだ。〕
 米国の神経科学者リーズ・エリオット『女の子の脳 男の子の脳』より。
 
(2023/11/18)NM
 
〈この本の詳細〉

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