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誰が農業を殺すのか
 [社会・政治・時事]

誰が農業を殺すのか (新潮新書)
 
窪田新之助/著 山口亮子/著
出版社名:新潮社(新潮新書 976)
出版年月:2022年12月
ISBNコード:978-4-10-610976-8
税込価格:946円
頁数・縦:266p・18cm
 
 日本農業を殺したのは誰か?
 ずばり、農水省というのが本書の主張である。農水省の保護政策が農業をダメにした。その実例を、育種、零細農家、コメ先物市場、有機農法などで示しながら論じる。
 
【目次】
第1章 中韓に略奪されっぱなしの知的財産
第2章 「農産物輸出5兆円」の幻想
第3章 農家と農地はこれ以上いらない
第4章 「過剰な安心」が農業をダメにする
第5章 日本のコメの値段が中国で決まる日
第6章 弄ばれる種子
第7章 農業政策のブーム「園芸振興」の落とし穴
第8章 「スマート農業」はスマートに進まない
 
【著者】
窪田 新之助 (クボタ シンノスケ)
 農業ジャーナリスト。日本農業新聞記者を経て、2012年よりフリー。
 
山口 亮子 (ヤマグチ リョウコ)
 ジャーナリスト。京都大学文学部卒、中国・北京大学修士課程(歴史学)修了。時事通信記者を経てフリー。執筆テーマは農業や中国。
 
【抜書】
●サカタのタネ、タキイ種苗(p41)
 (株)サカタのタネとタキイ種苗(株)は、野菜種子のシェアが世界的に高く、世界の種苗会社の売り上げランキングでトップ10に入っている。
 
●Oishii Farm(p82)
 日本人の古賀大貴が2016年に創業。米国ニュージャージー州で、完全閉鎖型の植物工場を運営する。
 2022年6月から、米国の高級スーパーWhole Foods Marketのニューヨーク・ノマド店でイチゴの販売が始まった。
 完全閉鎖型……室内の環境が外界から完全に隔離された状態を保てる施設。人工光を利用し、温度や湿度も自動で調整。
 米国のイチゴ生産は、9割以上がカリフォルニア州。消費地の近くに植物工場を建てて生産すれば、鮮度のいいイチゴを供給できる。
 
●スリランカ(p120)
 スリランカ政府(ラジャパクサ大統領)は、2021年、「国内全土で有機農業を100%にする」という目標を打ち出した。5月から、化学的に合成された農薬と肥料の輸入を禁止した。
 コメの生産量が半年で20%減少し、米価は50%値上がり。食糧不足に陥り、それまで自給率100%超だったコメを大量に輸入する破目に。
 外貨を獲得できる茶は品質と収量が下がり、4億2500万ドルの損失を出した。
 かねてからの経済危機が一層深まる。
 11月には、農薬と肥料の輸入禁止は解除された。
 身の危険を感じた大統領は、2022年7月に国外脱出、辞任。
 
●みどり戦略(p122)
 日本でも、2021年5月、農水省が「みどりの食料システム戦略(みどり戦略)」を策定。2050年までに化学農薬の使用量50%減、化学肥料の使用量30%減、有機農業の面積を農地全体の25%に。
 2018年時点での有機農業の割合は0.5%だった。
 慣行農業……有機農業に対して、既定の範囲内で農薬や化学肥料を使う農法。
 
●トウモロコシ、ダイズ(p144)
 日本で栽培が認可されている「遺伝子組み換え作物」は、トウモロコシ、ダイズ、西洋ナタネなど、149品種。2022年8月時点。
 いずれも、世界共通の指針に基づき、食品と飼料、環境(生物多様性への影響)という三つの点で安全が担保されたもの。食品は食品衛生法と食品安全基本法、飼料は飼料安全法と食品安全基本法、生物多様性はカルタヘナ法に依拠。
 しかし、実際に日本で商業的に栽培されているのは、青いバラのみ。サントリー(株)が世界で初めて開発。バラの花弁には存在しない、青色の色素を作るのに必要な酵素の遺伝子を組み込む。
 
●キモシン(p150)
 牛乳を凝固させる作用を持つ酵素。子牛の4番目の胃から、少量しか取れない。チーズ作りに欠かせない。
 遺伝子組み換え技術を活用し、微生物にキモシンを作る遺伝子を組み込んで大量生産できるようになった。現在、世界におけるチーズの製造量の約6割が遺伝子組み換えキモシンを使用。一般社団法人Jミルクによる。
 
●堂島米会所(p157)
 1730年、大坂堂島米会所でコメの先物市場が開設された。世界初の先物取引?
 200年余り続いたが、1918年に富山県で起こった米騒動の影響で全面停止となった。
 2011年、大坂堂島商品取引所(現在は、堂島取引所)が72年ぶりに復活。試験的に始め、4回延長されたが、2021年に農水省により、本上場が不認可となった。
 
●中粒米(p184)
 中粒米……アジアの熱帯高地や米国、ブラジル、イタリア、スペインなどで栽培。リゾットやサラダ。
 長粒米……中国の中南部や東南アジア、米国南部などで栽培。ピラフ、カレーなど。
 日本では短粒米が一般的。
 
●とねのめぐみ(p196)
 直播用のコメの品種。日本モンサント(株)が、2005年に品種登録。
 農研機構が育成した「どんとこい」と、福井県が育成した「コシヒカリ」をかけ合わせて開発した。
 2018年、日本モンサントが製薬王手のバイエルに買収されたのを機に、茨城県稲敷郡河内町にある第三セクターの(株)ふるさとかわちに譲渡された。
 県が育成した品種は種子代が1㎏あたり400~500円。とねのめぐみは1,000円。しかし、多収性のため、コシヒカリに比べても利益が出る。
 
(2023/11/20)NM
 
〈この本の詳細〉


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