小さなことばたちの辞書
ピップ・ウィリアムズ/著 最所篤子/訳
出版社名:小学館
出版年月:2022年10月
ISBNコード:978-4-09-356735-0
税込価格:3,300円
頁数・縦:526p・19cm
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『オックスフォード英語大辞典』編纂に関わった実在の人物を主な登場人物に据え、架空の女性編纂助手エズメを主人公に配した「歴史小説」。ひと時代前の辞書作りの現場の様子が伝わってきて興味深い。
友人に奨められた『博士と狂人 世界最高の辞書OEDの誕生秘話』(サイモン・ウィンチェスター著、日本語版はハヤカワ文庫)がきっかけとなったという。同書は、「ジェームズ・マレーと、とりわけ熱心な(そして悪名高い)協力者だったウィリアム・チェスター・マイナー博士の交流を描いた実話」(p.505、著者あとがき)とのことである。
また、博士の孫娘K・M・エリザベス・マレーによる評伝『ことばへの情熱――ジェイムズ・マレーとオックスフォード英語大辞典』(加藤知己訳、三省堂)もあり、こちらにエズメの父親ヘンリー・ニコルも登場するのだとか(p.524、訳者あとがき)。ただし、35歳で夭逝するらしいので、名前だけの拝借だと思われる。
【主な登場人物】
エズメ・ニコル……辞書編纂助手、ことばの蒐集家。リジーにはエッシーメイと呼ばれていた。
ハリー・ニコル……エズメの父、辞書編輯者。
リリー・ニコル……エズメの母、故人。
ジェームズ・マレー博士……『オックスフォード英語大辞典』(OED)編纂主幹。
リジー・レスター……マレー家の女中。
イーディス(ディータ)・トンプソン……エズメの名付け親。
ベス……ディータの妹。
メイベル・オショーネシー……市場の老婆。
ティルダ・テイラー……女優、サフラジェット。
ビル・テイラー……ティルダの弟。
ホレス・ハート……オックスフォード大学出版局経理部長、印刷所監督。
ガレス・オーウェン……植字工。
ヘンリー・ブラッドリー……OEDの第二編纂主幹。
フレッド・スウェットマン……辞書編纂者。
ダンクワース……辞書編纂者。
ヒルダ、エルシー、ロスフリス……マレー博士の娘、助手。
フィリップ・ブルックス、サラ・ブルックス……ディータの友人夫妻。
【著者】
Williams, Pip (ウィリアムズ,ピップ)
ロンドンに生まれ、オーストラリア・シドニーで育つ。現在はアデレード在住。旅行記事や書評を手がけ、掌編小説、詩などの作品もある。『小さなことばたちの辞書』は、著者初の長編小説である。
最所 篤子 (サイショ アツコ)
翻訳家。英国リーズ大学大学院卒業。
【抜書】
●おおざっぱな大意(p396)
〔経験からいって、〈辞書〉が与えてくれるのは、おおざっぱな大意でしかなかった。“悲哀”も、そうした語のひとつであることをわたしは知っていた。〕
(2023/3/15)NM
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