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世界はさわらないとわからない 「ユニバーサル・ミュージアム」とは何か
 [社会・政治・時事]

世界はさわらないとわからない: 「ユニバーサル・ミュージアム」とは何か (1008;1008) (平凡社新書 1008)
 
広瀬浩二郎/著
出版社名:平凡社(平凡社新書 1008)
出版年月:2022年7月
ISBNコード:978-4-582-86008-5
税込価格:1,034円
頁数・縦:269p・18cm
 
 全盲の「触常者」から「見常者」へのメッセージ。健常者を見えないゆえの新たな世界に導く。
 
【目次】
はじめに 「さわれない」時代の「さわらない」人々へ
第1部 書く―手と頭を動かす
 失明得暗―新たな「ユニバーサル」論の構築に向けて
 コロナ禍と特別展―二〇二一年を振り返る
 踊るようにさわる、さわるように躍る
 二一世紀版「耳なし芳一」
 障害当事者発のソーシャル・インクルージョンの実現に向けて―誰もが楽しめる「さわる写真」の制作と鑑賞
  ほか
第2部 話す―口と体を動かす
 暮らしと文化の役割―服部しほり、マクヴェイ山田久仁子、安井順一郎との対話
 障害/健常境界はあるか―高橋政代との対話
 他者理解の先にあるもの―岩崎奈緒子との対話
 スポーツの楽しみ―竹下義樹との対話
 古典芸能ルーツと未来―味方玄との対話
  ほか
おわりに 「誰一人取り残さない社会」は幸せなのか
 
【著者】
広瀬 浩二郎 (ヒロセ コウジロウ)
 1967年、東京都生まれ。国立民族学博物館准教授。自称「座頭市流フィールドワーカー」「琵琶を持たない琵琶法師」。13歳の時に失明。筑波大学附属盲学校から京都大学に進学。2000年、同大学院にて文学博士号取得。専門は日本宗教史、触文化論。「ユニバーサル・ミュージアム」(誰もが楽しめる博物館)の実践的研究に取り組み、“触”をテーマとするイベントを全国で実施。21年、国立民族学博物館において特別展「ユニバーサル・ミュージアム―さわる!“触”の大博覧会」を担当。
 
【抜書】
●視覚特別支援学校(p20)
 昨今、各地の盲学校の名称が「視覚特別支援学校」に変更されている。
 
●高揚感(p68)
〔 そんな僕にとって、コロナ禍はピンチである。二〇二〇年以降、自宅や研究室から、オンラインの会議、シンポジウムに参加する機会が増えている。オンラインでの講演、研究発表も度々経験した。オンラインでは、さわる資料を回覧することができない。普段は会場の雰囲気を感じ、聴衆を意識しながら話をするが、オンラインではそれも難しい。パソコンやタブレットに向かって喋ると、どうしても話が単調となり、高揚感・達成感もない。オンラインにも慣れなければと思う一方、講演会や研究会が早く対面でできるようになることを願っている。〕
 
●マスク(p220)
〔 さわること一つを取っても、いろいろな仕方があります。多くの人は、どうしても手でさわることばかり思い浮かべがちですが、触覚が他の感覚と違う最大の特徴は、特定の器官に限らず全身に分布している点でしょう。椅子に座って背中やお尻で感じる心地よさも触覚ですし、顔だってそうです。たとえば僕はコロナ禍でマスクをするようになって、二〇年間歩き続けてきた通勤路で迷ってしまうことが何度かありました。その時に気づいたのは、自分は風の流れや太陽の熱、植物の匂いなど、普段からいろいろなものを顔で感じながら歩いていたんだということです。顔というのはその全体が「センサー」なのであって、それがマスクの布一枚で隔てられるだけで、感覚が狂ってしまうというのは貴重な発見でした。〕
 
(2022/9/19)NM
 
〈この本の詳細〉


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