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中国減速の深層 「共同富裕」時代のリスクとチャンス
 [経済・ビジネス]

中国減速の深層 「共同富裕」時代のリスクとチャンス (日本経済新聞出版)
 
福本智之/著
出版社名:日経BP日本経済新聞出版
出版年月:2022年6月
ISBNコード:978-4-296-11378-1
税込価格:2,420円
頁数・縦:375p・19cm
 
 2050年ごろまでの中国の経済を、さまざまな観点から精緻に予測する。
 中国の経済規模は、基本的には減速する(すでに、減速している)が、経済成長がマイナスになることはなく、低位で発展し続け、米国と肩を並べるところまで行く、と予想する。
 ただ、習近平政権が続くことを前提としているので、政権交代があるのか、また、その際に新政権が習近平の政策を踏襲するのかどうかによっても大きく変わるだろう。
 
【目次】
はじめに―中国経済を等身大に評価する
第1章 2035年までのGDP倍増構想
第2章 共同富裕と改革開放・イノベーションの行方
第3章 人口動態と経済成長
第4章 デジタル化の伸長と成長への貢献
第5章 脱炭素と経済成長は両立するか?
第6章 金融と不動産のリスクの在処
第7章 米中対立とデカップリングの懸念
第8章 中長期成長に関する三つのシナリオ
おわりに―日本企業の取るべき戦略、スタンス
 
【著者】
福本 智之 (フクモト トモユキ)
 大阪経済大学経済学部教授。1989年京都大学法学部卒業、同年日本銀行入行。2000年在中国大使館一等書記官、2010年日本銀行国際局総務課長、2011年国際局参事役(IMF世界銀行東京総会準備を担当)、2012年北京事務所長、2015年北九州支店長、2018年国際局審議役(アジア担当総括)、2020年国際局長を歴任、2021年日本銀行退職。同年4月より現職。経営共創基盤シニアフェロー、東京財団政策研究所研究員。
 
【抜書】
●第二次産業(p36)
 ぺティ=クラークの法則。
 一国の経済が発展する過程で、経済の中心となる産業が第一次産業から第二次産業、第三次産業へとシフトしていく。
 それぞれの産業の労働生産性は、第一次産業より第二次産業のほうが高く、第三次産業は第二次産業より低い。このため、第一次産業から第二次産業へのシフトが中心の間は経済成長率は上昇するが、第二次産業から第三次産業へのシフトに伴い、経済成長率は鈍化する。
 
●共同富裕(p43)
 〔習近平政権の最も重要な政策の一つが共同富裕だ。従来の成長重視によりもたらされた歪みを是正し、イノベーション、調和、グリーン、開放、分配の公平性などにより重点を置いた持続可能な成長を通じて、皆で豊かになる共同富裕を実現しようとしているのだ。これは中国式のSDGs(Sustainable Development Goals)を掲げた、と言ってもよいだろう。〕
 
●都市人口(p55)
 中国の都市人口比率は、1982年の21%から2021年の65%にまで上昇した。国連の予想では、2050年に80%までしか上昇しない。
 国連によると、2020年時点の日本の都市人口比率は92%、2050年には95%まで上昇すると予想。
 
●出生率1.1(p122)
 10年に一度の人口センサス(日本の国勢調査に該当)によると、2020年の合計特殊出生率が1.3だった。
 2021年には、1.1程度にまで低下したと見込まれる。韓国は、2021年、0.81だった。
 国連が2019年に発表した世界人口予測によれば、これまで20年間、中国の合計特殊出生率は1.6~1.7で安定的に推移していた。
 中国では、一人っ子政策を見直し、2015年には夫婦両方とも一人っ子だった場合は子二人を生むことを認め、2016年には条件を設けずに子二人を認める「二人っ子政策」に転換した。
 2021年には夫婦一組当たり三人まで出産可能とする「三人っ子政策」に移行した。
 
●2023年(p126)
 2020年の総人口は14.1億人。2010年対比0.7億人の増加。
 2022年1月の国家統計局の発表によれば、2021年の総人口は、わずかに48万人の増加にとどまった。
 この傾向が続けば、2022年もしくは2023年には、中国の総人口は減少に転じる。
 2100年には、5.73億人(育禍人口研究の低位予想)~10.65億人(国連予測2019の中位予測)になると見られる。インドは15億人になると予想されている(国連予測2019年)。
 
●農民工(p143)
 中国の都市人口比率(2021年)は65%だが、都市戸籍を持つ人の比率は45%。20%2.6億人は、都市戸籍を持たない出稼ぎ労働者(農民工)。
 都市戸籍を持たない農民工は、公的な教育、医療、年金などの公的サービスを十分に受けられない。たとえば、子供を公立の学校に就学させられないので、農民工向けの非公式な私立の学校に通わせることが多い。もしくは、子供を農村に残し、祖父母に世話を任せて出稼ぎに来る夫婦も。
 
●灰色のサイ(p279)
 高い確率で大きな問題が起こると認識されているにもかかわらず、軽視されがちなリスク。
 「不動産は我が国の金融リスクに関する最大の灰色のサイだ」(2021年12月、郭樹清中国銀行保険監督管理委員会主席)。
ブラックスワン……事前にほとんど予測できず、起きた時の衝撃が大きいリスク。
 
●2035年(p339)
 福本による基本シナリオでは、2035年、中国のGDP規模は米国の0.96倍となり、その後2050年頃まで米中の経済規模はほぼ同程度で推移する。おそらく、米中の経済規模が似たようなレベルで推移する時代が長く続く。
 この程度の差は、為替レートの違いでいくらでも変わる。
 
(2022/9/5)NM
 
〈この本の詳細〉


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