SSブログ

日本経済の見えない真実 低成長・低金利の「出口」はあるか
 [経済・ビジネス]

日本経済の見えない真実 低成長・低金利の「出口」はあるか
 
門間一夫/著
出版社名:日経BP
出版年月:2022年9月
ISBNコード:978-4-296-00121-7
税込価格:2,640円
頁数・縦:305p・20cm
 
 2%物価目標未達のアベノミクスは失敗だったのか? さまざまな観点からアベノミクス後の日本経済を概観する。
 日本経済の現状を整理できる。
 
【目次】
第1章 アベノミクス景気の日本経済
 金融政策の大転換
 成長率が最低の景気回復
  ほか
第2章 正しい「成長戦略」の難しさ
 日本の生産性は低いという通説
 生産性上昇率は米欧も低い
  ほか
第3章 2%物価目標と異次元緩和
 「日銀は変わった」というメッセージ
 本当は異次元ではなかった異次元緩和
  ほか
第4章 強まる金融政策の限界
 自然利子率の低下
 金利の実効下限とリバーサルレート
  ほか
第5章 重要性を増す財政の役割(日本の財政は破綻するのか
 金利が上昇する「何らかの理由」とは
  ほか
 
【著者】
門間 一夫 (モンマ カズオ) 
 みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミスト。1957年生まれ。1981年東京大学経済学部卒業後、日本銀行入行。1988年ペンシルバニア大学ウォートン校経営大学院MBA取得。日銀では、調査統計局長、企画局長を経て2012年5月金融政策担当理事に就任し、白川方明総裁の下で「2%物価安定目標」の採択に至る局面を担当。2013年3月から国際担当理事として、G7やG20などの国際会議で黒田東彦総裁を補佐。2016年6月から現職。
 
【抜書】
●合成の誤謬(p56)
 個々の企業は合理的な経営判断のもとに、必要でない人件費を抑制してきた。しかし、個々の企業は合理的でも、全体として「人件費抑制⇒個人消費の停滞⇒国内市場の低迷」という連鎖が働く。市場が冷え込めば、企業にとって国内の投資や人件費を抑制することがますます合理的になる。
 ミクロの合理的な判断がマクロでは国内市場の縮小スパイラルを生む、という「合成の誤謬」が働いてきた。
 
●貧富の格差(p65)
〔 逃げられないのは労働者・消費者である。経済と金融のグローバル化は、国境を容易に越えられる者とそうでない者を分け、後者に負担を寄せていく力として作用してきた可能性がある。国境を容易に越えられる企業にとっては、グローバル化によって企業価値を最大化する選択肢が広がったのであり、合法的な租税回避行動もそのひとつである。〕
 
●サービス産業の生み出す価値(p89)
〔 しかし、サービス産業が生み出す価値は、それぞれの国やライフスタイルと密接不可分である。「品質もそろえた同じ価値サービス」など、国が違えば存在しない場合が多い。米欧諸国間の比較はまだよいとしても、日本のように米欧と生活習慣が異なる国は比較が難しい。たとえば日本の温泉旅館や寿司屋の生産性を、米国の何とどう比べたらよいのだろうか。日本の医療体制はコロナ禍では様々な課題に直面したが、少なくとも平時の医療サービスが日本ほど便利な国はない。町の交番を含めた日本の治安サービスは世界に冠たる質を誇るとされる。「便利」「安全」「正確」「清潔」がもたらす価値は、生産性の国際比較には反映されにくい。〕
 
●やりきった(p156)
〔 ところが、異次元緩和の開始から数年経過した時点で、二つの重要な事実が明らかになった。それは、①「全部盛り」の異次元緩和でも2%物価目標の達成は難しい、②2%物価目標が未達でも人手不足が深刻化するほど経済は改善する、の二つである。つまり、2%物価目標は「できもしないし、要りもしない」ことが明らかになった。もし、日銀が中途半端な緩和しか行っていなければ、「もっと大胆な緩和を行っていれば2%物価目標は達成できたはずであり、それによって日本経済はもっと良くなっていたはずだ」という誤った認識が、今も残っていた可能性が高い。〕
 
●ニュメレール(p219)
 価値尺度材。相対価格の基準となる財のこと。
 現実の世界では、金利が常にゼロとなる貨幣(=現金)が基準財(ニュメレール)の役割を果たしている。
 現金をなくしてデジタル通貨に完全に置き換える時代が来たら、デジタル通貨に決して金利を付けてはいけない。どんな未来が来ても、相対価格、相対金利の基準となる絶対座標軸は、何か一つ必要である。現金が消えるのであれば、その役割を引き継ぐデジタル通貨の金利は、永遠に「ゼロ」に固定しなければならない。
 「現金をなくせば金融緩和の地平が広がる」のではなく、「現金をなくしたらデジタル通貨に金利はつけられない」のである。
 
(2024/3/22)NM
 
〈この本の詳細〉


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ: