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デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方
 [コンピュータ・情報科学]

デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方 (ハヤカワ文庫 NF 573)
 
カル・ニューポート/著 池田真紀子/訳
出版社名:早川書房(ハヤカワ文庫 NF 573)
出版年月:2021年4月
ISBNコード:978-4-15-050573-8
税込価格:990円
頁数・縦:367p・16cm
 
 スマホ依存を最低限に抑え、価値の高い生活をするための指針を示す。
 本書の提案の根本にあるのは、これまで人類が進化によって得た「産物」を前提にしているということだ。面と向かってのコミュニケーションを基本とした社会性・社交である。それがデジタル依存によって損なわれることによる問題を提議している。デジタルの利用を最低限にとどめ、伝統的なコミュニケーションの枠から逸脱しないようにしよう、というのが著者の主張であるようだ。
 不安障害に陥る若者が増えているのも事実かもしれないが、将来、このネット接続の状態を疑問なく受け容れる状態が続いた場合、人類はどのように進化するのか(しないのか)。私は、そこに最大の興味がある。過去の価値観にとらわれず、新しい価値が人類をどう変えていくのか。ノスタルジックな良し悪しの判断はとりあえず脇に置いといて、というか、そんな判断を超越して、人も社会も変わっていくはずである。その先の将来の姿を知りたい。
 
【目次】
1 基礎
 スマホ依存の正体
 デジタル・ミニマリズム
 デジタル片づけ
2 演習
 一人で過ごす時間を持とう
 “いいね”をしない
 趣味を取り戻そう
 SNSアプリを全部消そう
 
【著者】
ニューポート,カル (Newport, Cal)
 ジョージタウン大学准教授(コンピューター科学)。1982年生まれ。ダートマス大学で学士号を、MIT(マサチューセッツ工科大学)で修士号と博士号を取得。2011年より現職。学業や仕事をうまくこなして生産性を上げ充実した人生を送るためのアドバイスをブログ「Study Hacks」で行なっており、年間アクセス数は300万を超える。
 
池田 真紀子 (イケダ マキコ)
 英米文学翻訳家、上智大学法学部国際関係法学科卒。
 
【抜書】
●間歇強化(p48)
 予想外のタイミングで報酬をもらったほうが、快感をつかさどる神経伝達物質ドーパミンの分泌量が多くなる。
 
●時刻の確認(p128)
 「非生産的なウサギ穴に吸い込まれてしまうきっかけの七五パーセントは、時刻を確かめたくて携帯電話を取り出すことだと気づいたんです」
 SNSにはまってしまうのは、時計代わりにスマホを使うのが原因?
 
●i世代(p157)
 物心ついたときにはiPhoneとソーシャルメディアが当たり前のように存在し、インターネットに常時つながるようになる前の時代を知らない世代。
 不安障害にかかる学生の割合が増えた。
 
●デフォルト・モード・ネットワーク(p193)
 PETスキャナーを使った脳の研究によると、それまで取り組んでいた課題を中断して休憩をとると、活発になる領域がある。「デフォルト・モード・ネットワーク」。社会的認知実験のさなかに活発な活動をする領域とほぼ一致している。
 休憩時間を与えられると、脳は自動的に社交生活について考え始める。
 
●低帯域幅(p205)
〔 オンラインでの交流より、リアルな世界での交流のほうが価値が高いという見解は、意外なものではない。私たちの脳は、オフラインで相手と顔を合わせてする交流が唯一のコミュニケーションだった時代の進化の産物だ。この章の前のほうで述べたように、オフラインでの交流は驚くほど豊かな経験だ。なぜなら、ボディーランゲージや表情の変化、声の調子など、微妙なアナログのヒントから得られる大量の情報を脳内で処理しなくてはならないからだ。一般的なデジタル・コミュニケーション・ツール上で行なわれる低帯域幅のおしゃべりは、オフラインでの豊かな交流の幻を作り出すことはできるかもしれないが、人間の脳に備わっている高性能な社交プロセス・ネットワークには物足りない。つまり、せっかくの性能を生かしきれず、人間のきわめて高い社交欲を満たすことができないのだ。だから、アナログな会話やリアルの世界での活動によって生まれる価値に比べると、フェイスブックのコメントやインスタグラムの“いいね”から生まれる価値は――その価値自体は幻ではなくても――低い。〕
 オンラインでのテキスト・コミュニケーションは、オフラインの面と向かってのコミュニケーションに比べ、情報量が少ないということ。それが「低帯域幅」の指す意味。
 
●会話中心コミュニケーション主義(p212)
 CCC(Conversation Centric Communication)主義。
 デジタル・ミニマリズムを成功させるために、自分なりの会話と接続(ネットでのコミュニケーション)のバランスを見つけること。
 
●FI(p240)
 経済的自立(Financial Independence)。
 資産から得られる収入だけで生活費をカバーできるような経済状況。
 インターネットの普及により、若年層を中心に、極端な倹約生活を維持することでこの経済的な自由への近道を探る人々が増えている。
 
●フィラデルフィア図書館(p287)
 ベンジャミン・フランクリンは、ジャントー・クラブのメンバーからの寄付金で書籍を共同購入し、メンバーなら誰でも利用できる仕組みを作った。
 その蔵書と仕組みを元に、1731年、フィラデルフィア図書館会社を設立した。米国初の会員制図書館。
 ジャントー・クラブ……1727年、フランクリンが創設した社交クラブ。「発想力に優れた知人の大方を集め、相互の向上を目的とするクラブを創設し、ジャントー・クラブと命名した。会合は毎週金曜の夜に開いた。私が起草した会則では、会員は持ち回りで道徳、政治、自然科学にまつわるトピックを最低でも一つ、会合に提出し、そこで討議にかけることになっていた。また三ヵ月に一本、自分で選んだテーマについて評論を執筆し、会合の場で朗読することと定められていた。」(フランクリンの自伝による)
 
●注意経済(p300)
 アテンション・エコノミー。
 消費者の注意を集め、それを使いやすい形に包装し直したものを広告業者に販売して金銭的利益を得ている企業。
 
●「神が造りたまいしもの」(p345)
 サミュエル・モールス、画家。
 1832年、ルアーヴルからニューヨークへの帰途、フランスの郵便船サリー号の船中で、ハーバード大学の地質学者チャールズ・ジャクソンと、電気という新しい媒体が持つ可能性についた話し合った。「電気の存在が回路のいずれかの部分で可視化できたら、電気を使って情報を伝達できるかもしれない」という着想を得る。
 ニューヨークのアトリエで、12年間、実験に没頭。
 1844年5月、米国最高裁の一室に集まった有力議員や政府高官の前で電鍵を操作。約60km離れたボルチモア郊外の鉄道駅で待機していた助手のアルフレッド・ヴェイルに電報を送信。
 「神が造りたまいしもの」(聖書の「民数記」の一節)。
 
(2021/7/28)NM
 
〈この本の詳細〉

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