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ロボットと人間 人とは何か
 [コンピュータ・情報科学]

ロボットと人間 人とは何か (岩波新書 新赤版 1901)
 
石黒浩/著
出版社名:岩波書店(岩波新書 新赤版 1901)
出版年月:2021年11月
ISBNコード:978-4-00-431901-6
税込価格:1,034円
頁数・縦:279p・18cm
 
 人間型ロボット研究の第一人者が、これまでの研究の成果と、将来のロボット共生社会の見通しを語る。
 
【目次】
1章 ロボット研究から学ぶ人間の本質
2章 対話ロボットとロボット社会
3章 アンドロイドの役割
4章 自律性とは何か
5章 心とは何か
6章 存在感とは何か
7章 対話とは何か
8章 体とは何か
9章 進化とは何か
10章 人間と共生するロボット
 
【著者】
石黒 浩 (イシグロ ヒロシ)
 ロボット工学者。大阪大学基礎工学研究科博士課程修了。工学博士。京都大学情報学研究科助教授、大阪大学工学研究科教授を経て、2009年より大阪大学基礎工学研究科教授(栄誉教授)。ATR石黒浩特別研究所客員所長(ATRフェロー)。遠隔操作ロボットや知能ロボットの研究開発に従事。人間酷似型ロボット(アンドロイド)研究の第一人者。2011年大阪文化賞受賞。2015年文部科学大臣表彰受賞およびシェイク・ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム知識賞受賞。2020年立石賞受賞。2021年オーフス大学名誉博士。
 
【抜書】
●リプリーQ1(p17)
 2000年頃からアンドロイドの研究開発に取り組み、2004年、世界初のアンドロイド「リプリーQ1」を開発し、2005年の愛知万博に展示。
 
●ジェミノイドHI-1(p17)
 2007年に開発した、遠隔操作アンドロイド。石黒がモデル。HIは、Hiroshi Ishiguroの頭文字。
 全身に約50本ものアクチュエータが使われており、腕を含め体のさまざまな部分が動く。(p164)
 ジェミノイド……人間と双子の遠隔操作アンドロイド。
 
●クリエイティブ(p26)
 パソコンの父と呼ばれるアラン・ケイ氏に言われた言葉。京都大学のプロジェクトで来日した際の講演にて。
 「パソコン社会の次には、ロボット社会が来ると思うのですが、あなたはどう思いますか?」という質問に対して。
 「君はクリエイティブな人間だろ。だったら未来は自分で実現するものだ。人に聞くものではない」。
 
●マルチ・モーダル(p42)
 複数のモダリティ(感覚)という意味。人間型ロボットの場合、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚など人間が持つ様々な知覚の統合という意味で用いられる。
 
●マルチモーダル・チューリングテスト(p55)
 従来のチューリングテストと異なり、多様なモダリティを通して人間らしさを表現しているロボットの人間らしさを評価するテスト。話す言葉、視線の動き、表情、ジェスチャーなど。人間型ロボット(ヒューマノイド)も対象となる。
 トータルチューリングテストは、人間と区別がつかないアンドロイドを目指すもの。
 
●目と口(p74)
 一般に、「目は自分の素直な感情を表し、口は意識して表現する感情を表す」と言われる。
 日本では、目を隠すサングラスはあまり好感を持たれないが、口を隠すマスクをすることに抵抗がない。
 欧米人は、マスクをすることに抵抗を感じる人が多いが、サングラスをすることに抵抗を感じる人は少ない。
 
●アンドロイド、ヒューマノイド(p87)
 アンドロイド……人間に酷似したロボット。
 ヒューマノイド……人間型ロボット。例えば、『スターウォーズ』のC-3PO。R2-D2は、単なるロボット。
 
●エリカ(p123)
 自律対話アンドロイド。大阪大学、京都大学、ATR(国際電気通信基礎技術研究所)に設置されている。ATRでは、1階の受付近くのロビーに常に座っており、来訪者に声をかけて対話をしている。
 科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(ERATO)において、石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクト(2014年7月~2021年3月)で開発された。
 自我を持つ大人に備わっていると思われる、比較的単純な意図や欲求の仕組みを採用した。
 
●内部パラメータ(p142)
 エリカは、相手との関係を五つの内部パラメータによって推定し、話題を選択する。
 自分の気分、対話相手への好感度、自己開示の度合い、わがまま度合い、相手との関係性。
 
●イブキ(p150)
 石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクトでは、移動型子どもアンドロイド「イブキ」を2019年に開発した。
 子どもアンドロイドなので、知能も子ども並みと勘案し、大人も辛抱強く対応してくれる。
 社会養育ロボット学……最初から社会の中で受け入れられる子どもの姿形をロボットに与え、ロボットが社会の中で人と関わりながら、人や環境から知識を獲得して、成長していくという新しいロボット研究。
 
●ジェミノイドF(p164)
 ジェミノイドHI-1の後に製作された女性のアンドロイド。頭部に12本のアクチュエータを装備し、人と対話する。遠隔操作型ではない。
 平田オリザ(大阪大学コミュニケーションデザインセンター教授)が15分程度の脚本を書き、人とともにアンドロイド劇場「さよなら」を演じる。死にゆく女性を前に、最後に谷川俊太郎の詩「とおく」を読む。
 
●テレノイド(p180)
 ジェミノイドと同様の遠隔操作ロボット。性別も年齢も分からない人間としての最小限の見かけを持つ、人間のミニマルデザイン。動くのは口と手だけ。
 
●ハグビー(p184)
 テレノイドの形状をさらに単純化。人間型の抱き枕。頭の部分に携帯電話を挿入して、相手と話をする。
 ハグビーを使って相手と話をすると、相手を腕の中に抱きながら話しているように感じられ、相手の存在を強く感じる。
 以前に、ヴイストンや京都西川から開発販売。
 
●自分の体(p222)
 ジェミノイドを使って人としばらく話をすると、操作者はジェミノイドの体を自分の体のように感じ始める。5分~10分ほどジェミノイドを使って人と話をした後に、話し相手が急にジェミノイドに触ると、操作者はまるで自分の体が触られたように感じる。
 女性の操作者のほとんどが、男性の操作者の半数以上が、そうした感覚を感じた。
 
●第三の腕(p236)
 両手を使ってボードの上のボールが目的の位置に来るようにバランスをとりながら、脳波によってロボットの三本目の腕を操作する実験。第三の腕でペットボトルを受け取る。
 トレーニングをすれば、80%以上の成功率で第三の腕を制御できるようになる。
 
(2022/12/12)NM
 
〈この本の詳細〉


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