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文にあたる
 [ 読書・出版・書店]

文にあたる
 
牟田都子/著
出版社名:亜紀書房
出版年月:2022年8月
ISBNコード:978-4-7505-1754-4
税込価格:1,760円
頁数・縦:255p・19cm
 
 プロの校閲者による、校正・校閲に関するエッセー。
 校閲者になったいきさつや、心構え、仕事の内容から、校閲の具体例など、幅広いテーマを平易な文書で綴る。
 
【目次】
1 赤鉛筆ではなく鉛筆で
 そんなことはない
 サバをめぐる冒険
 文章の強靱さ
  ほか
2 常に失敗している仕事
 上手い人を見る
 失敗のあとに
 かんなをかけすぎてはいけない
  ほか
3 探し続ける日々
 辞書の買い方がわからなかった
 タフでなければ
 疑う力
  ほか
 
【著者】
牟田 都子 (ムタ サトコ)
 1977年、東京都生まれ。図書館員を経て出版社の校閲部に勤務。2018年より個人で書籍・雑誌の校正を行う。
 
【抜書】
●新人(p128)
〔 この仕事のいいところは二年目の新人も三十七年目のベテランも関係ないところです。新人だろうがベテランだろうが落とすときには落とすかわり、拾えるかどうかも案外経験の長さとは関係ないように思います。ベテランの落としたところを新人が拾うこともあるし、新人が落としたところをベテランならかならず拾えるかといえばそうとも限らない、その意味では誰もが平等で、ひとしく必死にならざるを得ません。〕
 
●掃葉(p151)
 校正のこと。
 〔校正を「掃葉」と呼ぶのは、掃けども掃けども散りしきる落ち葉に誤植をなぞらえたのだと考えれば腑に落ちます。〕
 
●辞書アプリ(p157)
〔 スマートフォン用辞書アプリを導入したのは五年くらい前のことです。最初は仕事で必要になり購入したのですが、使ってみると思いのほか便利で、どんどん増えていきました。いちばん多いのは国語辞典で十種類ほど、漢和辞典や古語辞典、人名辞典も見つけると買ってしまいます。
 仕事で主に使うのはPCからアクセスするオンラインデータベース「ジャパンナレッジ」ですが、辞書アプリはインターネット接続なしに動作する点ですぐれています。バッテリーさえ気を付ければ、電波の届かない図書館の地下書庫でも旅先でも使える。紙の辞書と比べてオンラインデータベースやアプリには全文検索ができる、複数の辞書をいちどきにまとめて検索する「串刺し検索」が可能などの利点がありますが、アプリの携帯性の高さは図抜けていると感じます。辞書を持ち歩こうと意識することさえなく辞書を持ち歩くことがあたりまえになった。これは革命です。〕
 
●新潮社(p165)
 『村上海賊の娘』では、編集者ないし校閲部が「段ボール1箱はゆうにある史料の山」とゲラを引き合わせ、確認にあたった。
 〔『村上海賊の娘』の版元は創業者が校正者の経験を持ち、伝統的に校閲部の存在感が大きいことで有名な出版社です。〕
 ※版元=新潮社。
 
●疑う力(p199)
〔 調べることには段階があります。ゲラを読んでいて疑問が生まれ、何を使って調べるか考える。しかし「調べる」始まりはそこではなくて、まず「疑う」ことなのです。「パンダの尻尾は白い」という典拠を示すことは、これまで書いてきたようにそれほど難しくありません。でも、尻尾の黒いパンダを見たときに「パンダの尻尾の色は黒でよかった?」と思えなければ、そもそも調べることもできない。校正の技術として「調べる力」があるならば、さらに求められるのは「疑う力」であるともいえます。〕
 
(2023/1/23)NM
 
〈この本の詳細〉

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