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人の心に働きかける経済政策
 [経済・ビジネス]

人の心に働きかける経済政策 (岩波新書 新赤版 1908)
 
翁邦雄/著
出版社名:岩波書店(岩波新書 新赤版 1908)
出版年月:2022年1月
ISBNコード:978-4-00-431908-5
税込価格:946円
頁数・縦:191, 35p・18cm
 
 行動経済学が「メインストリーム」の経済学に及ぼした影響を論じ、現在の経済政策の問題点をあぶり出す。さらに、現在の日銀の「異次元緩和」政策を批判する。
 
【目次】
第1章 自己実現的予言
第2章 ヒトはどのように判断・行動しているのか
第3章 マクロ的な社会現象へのフレーミングやナッジ
第4章 メインストリームの経済学の「期待への働きかけ」
第5章 「期待に働きかける金融政策」としての異次元緩和
第6章 物価安定と無関心
付録:金融政策に関するノート
 
【著者】
翁 邦雄 (オキナ クニオ)
 1951年東京生まれ。1974年東京大学経済学部を卒業し日本銀行入行。1983年シカゴ大学Ph. D.取得(経済学)、筑波大学社会工学系助教授、日本銀行金融研究所長、京都大学公共政策大学院教授などを経て、大妻女子大学特任教授、京都大学公共政策大学院名誉フェロー。専攻‐国際経済学、金融論。著書‐『期待と投機の経済分析―「バブル」現象と為替レート』(東洋経済新報社、日経・経済図書文化賞受賞)など。
 
【抜書】
●現在バイアス(p26)
 「今の満足」の価値と、「明日の満足」の価値、「明後日の満足」の価値を比較した場合、「今の満足」の価値が突出して高いこと。
 例えば、ダイエットの失敗。「明日の満足」と「明後日以降の満足」の価値の差は小さい。だから、現在バイアスが強い人は、今日はたっぷり食事をし、明日から我慢を始めることで明後日以降の体系改善を目指す。そして、「明日」になっても……。
 
●プライミング効果(p51)
 あらかじめ受けた刺激(先行刺激、先行情報)によって、人の行動が影響されること。プライムとは、「前もって教え込む」という意味。
 例えば、選挙の投票率を上げるために、選挙の前日に、投票するつもりかどうかのアンケートを実施すると、投票する確率を25%高めることができる、という研究結果がある。
 
●ナッジ(p52)
 罰金や補助金など金銭的なインセンティブ以外にも、行動経済学的知見を用いて人の心に働きかけることでその行動に影響を及ぼすことができる。そうした手法をナッジと呼ぶ。リチャード・セイラーによる。
 ナッジ……(注意をひくため、あるいは何かをさせるために)人をそっと押す、という意味。
 ナッジによる介入は、「個人の選択の自由を侵害しないで行動に影響を与えること」を目的としている。アムステルダム・スキポール空港の男性用便器の例。中心にハエが描かれており、使用者は思わずそれを目標にしてしまう。強制手段を用いずに飛散防止を実現。
 
●自然利子率(p96)
 「完全雇用が過不足なく実現できる需要」を引き出す実質金利水準。
 19世紀スウェーデンの経済学者クヌート・ヴィクセルの命名。
 
●2%インフレ(p177)
〔 ここまでの議論を総括したい。人々が希求する物価安定の本質は、グリーンスパンが定義するように、インフレ率に関心を持たなくてよい状態だ。二%というインフレ目標には、そうした本質的な意味はない。
 もし、別途、何らかの理由で二%のインフレ率達成が日本経済にとって不可欠なら(その理由は黒田総裁の三点セットにはないが)、そのための手段は、物価安定の正常性バイアスを壊さないこと、国民にとっても望ましいインフレであるというポジティブなフレーミングが説得力を持って作れること、の二点が必要であるはずだ。換言すれば、①正常性バイアスを壊さない方法で物価のアンカーをゼロ近辺から二%近辺に押し上げる、②物価上昇に対する忌避感を緩和するため物価上昇が実質所得の減少につながらないことが目に見えるフレーミングを作る、ということになるだろう。〕
 
(2023/2/24)NM
 
〈この本の詳細〉


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