SSブログ

人新世の経済思想史 生・自然・環境をめぐるポリティカル・エコノミー
 [経済・ビジネス]

人新世の経済思想史: 生・自然・環境をめぐるポリティカル・エコノミー
 
桑田学/著
出版社名:青土社
出版年月:2023年2月
ISBNコード:978-4-7917-7534-7
税込価格:3,080円
頁数・縦:327, 25p・19cm
 
 「エコノミー」という学が、元来、人間の活動のみを対象とするものではなく、もっと広い概念であったことを歴史的にひもとく。しかし、結局のところそれらの研究は、現代の経済学において主流とはならなかったようだ。
 
【目次】
序章 エコノミーの脱自然化、人新世の起源
第1章 化石経済と熱力学の黙示録
第2章 生命と富のオイコノミア
第3章 植物学者が見た生命都市のエコノミー
第4章 富のエコノミー/負債の反エコノミー
終章 人間以上のエコノミーに向けて
 
【著者】
桑田 学 (クワタ マナブ)
 1982年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科特任研究員などを経て、福山市立大学都市経営学部准教授。
 
【抜書】
●オイコノミア(p20)
〔 エコノミーという語は、古代ギリシャの「オイコノミアOikonomia」に由来し、それはクセノフォンやアリストテレスのテクストに典型的に現れるように、家長による家oikos(奴隷、家畜、農作業用具を含む生存の場)の秩序ある管理運営、すなわち「家政」を意味した。ただし、クセノフォンにおいてオイコノミアはすでに、家と財産の善き管理にとどまらない意味――神による宇宙の万物の管理運営――をもっており、その後、中世にはストア派の哲学やキリスト教の思想、弁論術・修辞学において固有の意味づけがなされ、さらに初期近代の博物学や生理学など自然哲学の領域における「アニマル・エコノミー」(動物の身体組織の秩序)や「ネイチャーズ・エコノミー」(自然の秩序・摂理)への拡張を経て、ようやく一八世紀後半以降、「ポリティカル・エコノミー」(政治経済学)へいたりついた、といわれる。麻生博之はこうした歴史的に複雑な経緯をエコノミー概念に通底する意味を、(その難しさを踏まえつつ)次のように要約している。「エコノミーとは、いわば、「家長」(家父であれ、神であれ、統治者であれ、個々人が有するとみなされるある種の「合理性」であれ)による、「家」の境界内のものごと、そして時間的な、あるいは有限なものごとに対する秩序だった「統治」を、またそれらのものごとを無駄なく巧妙に配置する調和した「秩序」そのものを、さらにはそうした統治が可能であり、そうした秩序が存在すると見なしたうえで、そのありようを探ろうとする実践的/理論的な「学」の形態を、意味するものといえる」。ここからもわかるように、歴史的に見れば、エコノミーは、①対象に内在する原理にそくした統御・統治、②統御・統治の対象となる秩序ないし配置、③統御する学ないし実践的な術、という複合的な意味をもつ概念であることをまず押さえておく必要がある。〕
 麻生博之編『エコノミー概念の倫理思想史的研究』二〇〇七年度-二〇〇九年度科学研究費補助金研究成果報告書・補足論集、2010年、p.ⅰ。
 
(2023/5/16)NM
 
〈この本の詳細〉

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。