SSブログ

敵対的買収とアクティビスト
 [経済・ビジネス]

敵対的買収とアクティビスト (岩波新書)
 
太田洋/著
出版社名:岩波書店(岩波新書 新赤版 1973)
出版年月:2023年5月
ISBNコード:978-4-00-431973-3
税込価格:1,100円
頁数・縦:259p・18cm
 
 敵対的買収について、直近の実例を豊富に取り入れて論じる。日本と欧米との違いについても幅広く言及。
 ちなみにアクティビストとは、「その潜在的資産価値に比較して株価が割安な対象会社の株式の数%~数十%を取得して、対象会社に経営の効率化や株主還元の強化等の要求を行ってその株価を引き上げる等したうえで、数か月から数年後に保有株式を売却してリターンを上げる投資家」(p.50)とのことである。俗に、「物言う株主」とも。
 
【目次】
第1章 敵対的買収とは
第2章 アクティビストとは
第3章 敵対的買収の歴史―アクティビストの登場から隆盛まで
第4章 買収防衛策とはどのようなものか
第5章 各国は敵対的買収をどのように規制しようとしているか―法的規制と判例の動向
第6章 敵対的買収と株主アクティビズムの将来
 
【著者】
太田 洋 (オオタ ヨウ)
 弁護士・NY州弁護士(西村あさひ法律事務所パートナー)。1991年東京大学法学部第二類卒業、1993年弁護士登録、2000年米国ハーバード・ロースクールLL. M.(法学修士号)取得、2001年米国NY州弁護士登録。法務省民事局付(任期付任用公務員)、京都大学法科大学院非常勤講師、東京大学大学院法学政治学研究科教授などを歴任。金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」委員、経済産業省「最低税率課税制度及び外国子会社合算税制のあり方に関する研究会」委員、同「対日M&A課題と活用事例に関する研究会」委員、同「公正な買収の在り方に関する研究会」委員などもつとめる。日本経済新聞「2022年に活躍した弁護士ランキング」企業法務全般(会社法)分野第1位など受賞多数。
 
【抜書】
●閉鎖会社(p2)
 株式会社であっても、その株式全部について、その譲渡に会社の承認が必要とされている会社。全部譲渡制限会社ともいう。
 
●エージェンシー問題(p7)
 買収対象会社の取締役(株主からすれば会社の経営を委託している代理人=エージェント)が、株主とは異なる独自の利害(典型的には、取締役の職にとどまり続けたいという利益。このような利益を「保身の利益」という)を有しているため、株主の意思に反した行動をとる可能性があるという問題。
 
●グリーンメイリング(p28)
 真に会社経営に参加する意思がないにもかかわらず、ただ株価を釣り上げて高値で株式を会社関係者に引き取らせる目的で株式の買収を行うこと。ライブドア対ニッポン放送事件に関して東京高裁が示した、対象会社の中長期的な企業価値ないし株主共同の利益を毀損する四つの類型の一。
 恐喝を意味する「blackmail」のblackを、ドル札が緑色をしていることからgreenに入れ替えて作った造語。
 
●パブリック・ベネフィット・コーポレーション(p234)
 基本定款または付属定款に、通常の株式会社にみられる事業目的とともに、社会問題や環境問題への取り組みなどの公益的目的を記載した会社。
 取締役会は、そのような公益的目的の実現に取り組むべき信認義務を負っているものとされる。株主は、取締役がかかる公益的目的の実現に反する行動などをとった場合には、差し止め命令による救済を求めることができる。
 2010年のメリーランド州を皮切りに、米国各州の会社法において導入されている。2022年4月時点で全米40州およびコロンビア特別区。全米の上場会社の半数以上が設立準拠法として選択しているデラウェア州の会社法でも、13年7月に法制化されている。
 
(2023/10/31)NM
 
〈この本の詳細〉

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。