暗殺教団 「アサシン」の伝説と実像
[哲学・心理・宗教]
バーナード・ルイス/〔著〕 加藤和秀/訳
出版社名:講談社(講談社学術文庫 2649)
出版年月:2021年3月
ISBNコード:978-4-06-522778-7
税込価格:1,221円
頁数・縦:277p・15cm
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「暗殺教団」と言われたイスラム教シーア派の少数派、イスマーイール派についてその成り立ちと、13世紀までの歴史を詳述する。1973年の訳書の復刊。原本は、『暗殺教団ーーイスラームの過激派』(新泉社)。英語原著は1967年出版。
【目次】
第1章 アサシンの発見
第2章 イスマーイール派
第3章 新教説
第4章 ペルシアにおける布教
第5章 山の老人
第6章 手段と目的
【著者】
ルイス,バーナード (Lewis, Bernard)
1916-2018年。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院卒業。イギリス外務省勤務ののち、ロンドン大学教授、プリンストン大学教授。同大学名誉教授。専攻はイスラーム・中東史。
加藤 和秀 (カトウ カズヒデ)
1941-2006年。北海道大学大学院文学研究科博士課程単位取得中退。
【抜書】
●ハサン・イ・サッバーフ(p62)
ペルシアのゴム市で生まれた。ペルシアにおけるアラブ人居住の最初の中心地。十二イマーム派シーア主義の根拠地。
父は、イラクのクーファ出身で、十二イマーム信徒。その祖先はイエメン人。
子供の頃、現在のテヘラン市の近くのレイに移り住んだ。レイは、9世紀以来、ダーイー(召喚者)の活動の中心地だった。
●アラムート(p68)
新教説(イスマーイール派ニザール派)のハサン・イ・サッバーフ(-1124)は、エルブルズ山脈の中心部にある高い岩山の頂上、アラムート城を基地とした。
アラムート城は、ダイラム地方の王の一人によって建てられたと言われている。
●テンプル騎士団(p198)
〔山の老人はテンプル騎士団とホスピタル騎士団に貢物を支払っていた。それは彼らがアサシンを全く恐れなかったからである。何故ならば、たとえその老人がテンプル騎士団あるいはホスピタル騎士団の頭領を殺させたとしても、何ら得ることができなかったから、つまり、彼がもしそのひとりを殺したとしても、別の適当な人物がそれにとって代るの常であることを彼はひじょうに良く知っており、そのため、彼は何も得ることができないところでアサシンたちを失いたくはなかったからである。〕
●イスマーイール派の敵(p204)
イスマーイール派にとって、敵はスンニ派の政治的・軍事的、そして官僚的・宗教的な体制であった。彼らの殺人はそれを脅かし弱め、最終的に打倒するために計画されたものであった。
●アズハル大学(p254、解説、青木健)
909年にチュニジアでファーティマ朝を興したイスマーイール派国家は、968年にエジプト攻略に成功し、新たに建設したカイロ市に王朝首都を移した。
970年に、イスマーイール派の教義研究機関としてアズハル大学を開学した。現在はスンナ派イスラームの最高学府とされている。
(2021/8/2)NM
〈この本の詳細〉
現代刑務所の作法
[社会・政治・時事]
河合幹雄/監修
出版社名:G.B.
出版年月:2021年3月
ISBNコード:978-4-910428-02-4
税込価格:1,760円
頁数・縦:174p・21cm
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日本の刑罰、刑務所に関するあれこれを教えてくれる。
刑務所に入ったら、本書を参考にしてお勤めに励みましょう!?
【目次】
1章 入所の作法
収監までのプロセス
新人研修
基礎知識
2章 暮らしの作法
暮らしの基本
刑務所の衣食住
健康管理
3章 受刑者の楽しみと癒やしの作法
余暇・娯楽
楽しみと癒やし
4章 刑務官の作法
5章 出所の作法
仮出所
出所
【著者】
河合 幹雄 (カワイ ミキオ)
法社会学者。京都大学大学院にて法社会学専攻後、フランスの名門法学研究科であるパリ第2大学へ留学。その後、京都大学法学部助手を経て、桐蔭横浜大学法学部教授・副学長。公益財団法人矯正協会評議員、全国篤志面接委員連盟評議員も務める。ほか、日本犯罪社会学会理事、日本法社会学会理事、日本被害者学会理事を務め、警察大学校教員、嘱託法務省刑事施設視察委員会委員長などを歴任した。
【抜書】
●矯正管区(p4)
刑務所や少年員、拘置所等の矯正施設に対して、適切な管理・運営にあたる機関。東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松の8か所に設置されている。
法務大臣<法務省<矯正局<矯正管区
矯正管区の下に、婦人補導院、少年鑑別所、少年院、拘置所、少年刑務所、刑務所、がある。
●拘置所(p24)
東京(2か所)、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡の8か所。拘置支所を合わせると全国111か所。
拘置所に収監されているのは、主に裁判で刑が下されていない被告人(未決囚)だが、受刑者(既決囚)も在監している。配食や洗濯など、未決囚の世話をさせている。刑務所では、身の回りで必要なことは自分たちで行うのが原則だが、「刑が確定するまでは無罪」である未決囚にやらせるわけにはいかない。
●刑務所(p28)
全国に67か所。
A指標刑務所……17か所。犯罪傾向が進んでいない受刑者を収容。
B指標刑務所……41か所。再犯および暴力団構成員等、犯罪傾向が進んでいる受刑者を収容。
医療刑務所……3か所。
女子刑務所……5か所。
在日米軍関係者を収容する刑務所……1か所。在日米軍収容所(横須賀刑務所支所)。食事は洋食。独房は若干広め、風呂の代わりにシャワー。
A指標は、以下の5つの指標すべてに合致するもの。
① 受刑歴がない(5年以上再犯していなければ、初犯扱い)。
② 少年院歴は1回以下。
③ 反社会的勢力ではない。
④ 犯行が計画的ではない。
⑤ 過去1年以内の薬物中毒、アルコール中毒症状がない。
●刑罰(p40)
拘留……1日以上30日以内の短期間の服役。刑法の規定では、罰金より軽い刑罰。作業義務が課されず、拘置所で刑期を終えることが多い。
禁固……無期または1カ月以上20年以下の長期にわたる拘禁。作業義務はないが、願い出ることは可能。ほとんどの受刑者が刑務作業を希望。
懲役……拘禁に加えて作業義務が課される。刑期は1年未満から無期懲役まで、幅がある。
罰金・科料……額面1万円以上が罰金。1,000円以上1万円未満が科料。払えない場合、刑務所内での作業で清算することも可能(労役場留置〈ろうえきじょうりゅうち〉)。期間は、罰金で1日以上2
年以下、科料で1日以上30日以下。1日5,000円~1万円の換算で働くことになる。
死刑……極刑ともいう。死刑囚は、死刑が執行されて初めて受刑者となるため、立場上、執行前は未決囚。そのため、刑務所には移送されず、処刑場のある拘置所か、刑務所内の拘置支所に収容されるのが通例。
●犯歴票(p158)
犯罪人名簿……地方検察庁から刑罰確定者の情報が通知されると、主に選挙権・被選挙権を確認するために前科情報が記載される名簿名簿。市区町村ごとに管理する。外部に漏れないよう、厳重に管理される。
犯歴票……罰金以上の刑が確定した場合、記載・保存される。検察庁が管理、刑事裁判の資料という位置付け。照会可能なのは検察官、検察事務官のみ。
犯歴票から名前が抹消されることはないが、犯罪名簿からは、以下の条件をクリアすれば抹消される。
① 執行猶予で問題なく期間満了。
② 罰金以下の刑の場合、釈放後に5年間再犯なし。
③ 禁固以上の刑の場合、釈放後に10年間再犯なし。
④ 大赦や特赦を受けたとき。
●女子少年院(p165)
愛光女子学園、交野女子学院、貴船原少女苑、など。
法務教官はほぼ女性のため、防犯対策は外部に依頼(セコムに加入)している。
男子の場合、窃盗などで少年院に収容されることが多いが、女子の場合、覚醒剤や殺人で女子少年院に収容されるケースが多い。
(2021/8/1)NM
〈この本の詳細〉