科学者をまどわす魔法の数字,インパクト・ファクターの正体 誤用の悪影響と賢い使い方を考える
[自然科学]
麻生一枝/著
出版社名:日本評論社
出版年月:2021年1月
ISBNコード:978-4-535-78929-6
税込価格:2,860円
頁数・縦:162p・21cm
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インパクト・ファクターなるものが、研究者の業績を判断するのに大いに活用されている。
しかし、これは一方で問題の多い指標である。本来の目的からずれてしまっている。
本書では、インパクト・ファクターを起源に遡って解説し、その原理と問題点を探る。
【目次】
プロローグ 間違った指標で評価される科学者たち
第1章 インパクト・ファクターとは何か
インパクト・ファクターの定義
インパクト・ファクターの起源
ほか
第2章 インパクト・ファクターの誤用とその問題点
雑誌のインパクト・ファクターからではわからない、個々の論文の被引用回数
分野によって大きく異なるインパクト・ファクター
ほか
第3章 インパクト・ファクターの誤用のもたらすもの
個々の研究者による論文の被引用回数の操作
出版社や編集委員によるインパクト・ファクターの操作
ほか
第4章 インパクト・ファクター偏重主義根絶への動き
インパクト・ファクターの不適切な使用に関するEASE声明
研究評価に関するサンフランシスコ宣言
エピローグ
【著者】
麻生 一枝 (アソウ カズエ)
成蹊大学非常勤講師。お茶の水女子大学理学部数学科卒業、オレゴン州立大学動物学科卒業、プエルトリコ大学海洋学科修士、ハワイ大学動物学Ph.D.。専門は動物行動生態学。オハイオ州立大学ポスト・ドク研究員、お茶の水女子大学人間文化研究所研究員、長浜バイオ大学准教授を経て、科学ジャーナリズム海外修行準備中。
【抜書】
●インパクト・ファクター(p1)
もともとは、大学の図書館が図書を購入するときの参考にするために考え出されたもの。
ある雑誌の2019年のインパクト・ファクターは、次の式で計算される。
(2017年と2018年にその雑誌に掲載された論文が、2019年に様々な雑誌に引用された回数)
――――――――――――――――――――――――――――
(2017年と2018年にその雑誌に掲載された論文の総数)
JCR(Jounal Citatation Reports)に掲載される。クラリベイト・アナリティクス社(本社:米国フィラデルフィア)が販売。以前はトムソン・ロイター社。
81ヵ国で出版された11,459の学術雑誌が対象(2016年時点)。
●SCI(p3)
Science Citatation Index。
1955年に、ユージーン・ガーフィールドが考案。発表された論文がその後どの論文に引用されていくかを追跡することができる。
彼が設立したInstitute for Scientific Infromation社(その後、トムソンISI)から1963年に刊行された。
インパクト・ファクターの起源。
●実際の算出式(p44)
ある雑誌の2019年のインパクト・ファクター。
(2017年と2018年にその雑誌に掲載された記事が、2019年に様々な雑誌に引用された回数)
――――――――――――――――――――――――――――
(2017年と2018年にその雑誌に掲載された引用可能な記事の総数)
引用可能記事とは、研究論文(原著論文とレビュー論文)のことである。
●ネカト(p106)
データの捏造、データの改竄、盗用、重複出版は、明らかな不正。
捏造(fabrication)、改竄(falsification)、盗用(plagiarism)は、FFPと呼ばれ、三大研究不正として広く認識されている。
日本語では、「ネカト」。
(2021/8/30)NM
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