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ミャンマー政変 クーデターの深層を探る
 [社会・政治・時事]

ミャンマー政変 ――クーデターの深層を探る (ちくま新書)  
北川成史/著
出版社名:筑摩書房(ちくま新書 1587)
出版年月:2021年7月
ISBNコード:978-4-480-07412-6
税込価格:924円
頁数・縦:254p・18cm
 
 2021年2月1日に国軍によるクーデターの発生したミャンマーの現状を、ロヒンギャ問題や、コロナ禍前の現地取材のレポートも交えながら報告する。
 
【目次】
第1章 クーデターの衝撃
 未明の急襲
 暴挙の前兆
 広がるデモ
第2章 スーチーと国軍
 創設の父、対立の娘
 特権の侵食
 冷めた関係
第3章 多民族国家の矛盾
 ロヒンギャ七〇万人の流出
 独立国「ワ」
 タイ国境の両側
第4章 狭まる言論
 真実への報復
 後退する自由
 暴走するSNS
第5章 問われる国際社会
 関係国の思惑
 日本の役割
 
【著者】
北川 成史 (キタガワ シゲフミ)
 1970年、愛知県生まれ。早稲田大商学部卒。1995年に中日新聞社入社。同社東京本社(東京新聞)社会部を経て、2017年9月から3年間、東京新聞・中日新聞バンコク支局特派員(19年8月から支局長)として、アジア・オセアニアを担当した。現在、東京本社社会部記者。
 
【抜書】
●左側通行(p53)
 ミャンマーもかつては、車は左側通行だった。英国の植民地であったため。
 独立後、国軍のネウィン大将がクーデターで築いた独裁政権時代、1970年代に突然、右側通行に変更になった。
 日本車の中古車が人気なので、右側通行にもかかわらず、右ハンドルの日本車が幅を利かせている。
 2018年以降、自動車メーカーの進出と国内生産を促すため、重機を除く右ハンドル車の輸入を全面禁止したが、その後もタイからモエイ川をのんびりと船で渡る密輸の日本製乗用車が見られる。
 
●アウンサンスーチー(p58)
 アウンサンは父、スーは祖母、チーは母の名を受け継いでいる。
 一部の少数民族を除き、ミャンマー人は姓を持たない。アウンサンスーチーのことを「スーチー」と呼ぶのは、本来は好ましい略称ではない。
 
●ミャンマービール(p82)
 ミャンマーのビール市場で8割のシェアを持つ「ミャンマー・ブルワリー(MBL)」の看板銘柄。
 MBLは、国軍系の複合企業「ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)と日本のキリンホールディングスとの合弁会社。
 ミャンマーには、軍政下の1990年代に設立されたMEHLと、「ミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)」という二つの国軍系複合企業がある。両社で106の子会社と27の関連会社を傘下に抱えている。業種は、農林漁業、建設、不動産、電気、ガス、金融、保険、宝石・鉱物採掘、情報通信、製造、旅行、サッカークラブ、ホテル、貿易、輸送、など、多岐にわたる。
 MEHLは、会長が国軍中将。取締役を将校7人と退役者4人が務める。
 MECは、国防省(大臣は国軍総司令官によって任命される)が運営し、利益は直接、国軍のために使われる。
 
●8民族(p108)
 ミャンマーには先住民族のリストがある。
 カチン、カヤ、カレン、チン、ビルマ、モン、ラカイン、シャンという八つの主要グループの下に、計135の民族が名を連ねている。ロヒンギャは、その中に含まれていない。
 国民全体を占めるビルマ人が多く住む地域は国土の中央部を中心に七つの管区が割り振られている。
 その他の七つの少数民族の主要グループが多く住む国土周縁部は、それぞれのグループの名を冠した七つの州を設けている。
 先住民族の定義は、第一次英緬戦争が始まる1824年より前からミャンマーに住んでいた民族。ネウィン時代の1982年に改正された国籍法に基づき、135の先住民族には自動的にミャンマー国籍が与えられる。
 
●Facebookアカウントの停止(p207)
 2017年8月、ARSA(アラカン・ロヒンギャ救世軍)が治安部隊を襲撃した後、Facebookはテロ組織などによる投稿を禁じる社内基準に基づき、ARSAによる使用を停止した。
 2018年1月には、ウィラトゥ(排外的な仏教団体マバタの代表的な僧侶)のアカウントを削除。
 同年8月には、「民族、宗教間の対立を深める行為に利用されるのを防ぐため」として、ミンアウンフライン総司令官や国軍系テレビ局「ミャワディ」を含む20の個人・組織を対象に利用を禁じた。
 
(2021/11/10)NM
 
〈この本の詳細〉


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