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フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔
 [コンピュータ・情報科学]

フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔 (講談社現代新書)
 
高橋昌一郎/著
出版社名:講談社(講談社現代新書 2608)
出版年月:2021年2月
ISBNコード:978-4-06-522440-3
税込価格:1,034円
頁数・縦:270p・18cm
 
 米国における「コンピュータの父」、ジョン・フォン・ノイマンの伝記。彼の足跡が分かりやすく書かれている。
 「哲学」と言われると難解に感じられが、そんな趣はなく、いろいろなエピソードを盛り込んだ、肩の凝らない読み物になっている。
 
【目次】
第1章 数学の天才
第2章 ヒルベルト学派の旗手
第3章 プリンストン高等研究所
第4章 私生活
第5章 第二次大戦と原子爆弾
第6章 コンピュータの父
第7章 フォン・ノイマン委員会
 
【著者】
高橋 昌一郎 (タカハシ ショウイチロウ)
 1959年生まれ。ミシガン大学大学院哲学研究科修了。現在は、國學院大學教授。専門は、論理学・科学哲学。
 
【抜書】
●皇居(p13)
 1945年5月10日の「標的委員会」で、米国空軍が原爆投下の目標リストとして、皇居、横浜、新潟、京都、広島、小倉を提案した。
 フォン・ノイマンは、戦後の占領統治まで見通しして、皇居への投下に反対した。もし空軍があくまで皇居への投下を主張する場合、「我々に差し戻せ」と書いたメモが残されている。一方、京都への原爆投下を強く主張した。「歴史的文化的価値が高いからこそ京都に投下すべきだ」。これに対し、ヘンリー・スチムソン陸軍長官が、「それでは戦後、ローマやアテネを破壊したのと同じ非難を世界中から浴びることになる」と強硬に反対。京都も却下された。
 すでに通常爆弾で破壊されていた横浜、情報が不足していた新潟がはずされ、最終的に広島、小倉、長崎の順に2発の原爆が投下されることになった。
 
●コンピュータの父(p188)
 ミシガン大学大学院のアーサー・バークス教授。フォン・ノイマンの下でコンピュータを開発した情報科学者。ノイマンの死後に彼の「自己増殖オートメタ理論」を展開し完成させた。
 「『コンピュータの父』といえば、もちろんアメリカではジョン・フォン・ノイマンですが、イギリスではアラン・チューリングになります。自分がどこの国で喋っているのか、くれぐれも忘れないように!」
 退官する最終年度の秋学期の講義で。
 
●コロッサス(p204)
 1943年12月、英国のブレッチリー・パークにて、世界最初の「全電子式暗号解読機」の試作品が完成した。「コロッサス(巨象)」。
 入出力は穿孔テープで、制御回路、並列処理、割り込み、ループ、クロックパルスといった、現代のコンピュータで用いられている基本構造が組み込まれていた。
 ウィンストン・チャーチルは、第二次世界大戦が終結すると、10機製造されたコロッサスのうち、2機だけを残して他をすべて解体するよう命令した。チャーチルは、「全電子式暗号解読機」の情報が他国(特にソ連)に流出することを極度に恐れていた。そのため、設計図や関連文書をはじめ、「残った部品は、それが何に使われたか分からないように徹底的に破壊せよ」と厳命した。
 
●スカート(p236)
 フォン・ノイマンには、秘書のスカートの中を覗き込む「癖」があった。そのため、机の前を段ボールで目張りする秘書もいた。
〔 彼の助手を務めたスタニスワフ・ウラムによれば、ノイマンは、スカートをはいた女性が通ると、放心したような表情でその姿を振り返って見つめるのが常であり、それは、誰の目にも明らかな彼特有の「癖」だったと述べている。
 常に頭脳を全力回転させていたノイマンの奇妙な「癖」は、彼の脳内に生じた唯一の「バグ」だったのかもしれない。〕
 
(2023/5/29)NM
 
〈この本の詳細〉


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