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なぜ中国は台湾を併合できないのか
 [社会・政治・時事]

なぜ中国は台湾を併合できないのか
 
福島香織/著
出版社名:PHP研究所
出版年月:2023年9月
ISBNコード:978-4-569-85554-7
税込価格:1,870円
頁数・縦:388p・19cm
 
 大陸中国との関係を中心に、台湾の現代政治史を綴る。
 2024年台湾総統選挙の背景に関する理解が進む1冊。
 
【目次】
序章 台湾のコロナ対策はなぜ成功したのか
第1章 台湾民主化という「奇跡」
第2章 民進党政権が定着させた「台湾アイデンティティ」
第3章 蔡英文政権の変貌
第4章 2024年の総統選挙と台湾の未来
第5章 習近平「一つの中国」の失敗
 
【著者】
福島 香織 (フクシマ カオリ)
 ジャーナリスト・中国ウォッチャー・文筆家。1967年、奈良市生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社に入社。上海・復旦大学に業務留学後、香港支局長、中国総局(北京)駐在記者、政治部記者などを経て2009年に退社。以降はフリージャーナリストとして活躍。ラジオ、テレビでのコメンテーターも務める。
 
【抜書】
●野百合学生運動(p106)
 1990年3月16日、台湾大学の周克任、何宗憲、楊弘任ら9人の学生たちが、集会やデモを禁止されている博愛特区、中正祈念堂前の広場で、万年国会(国民大会)の解散を求める座り込みを始めた。
 17日夕には、座り込みが200人に達した。18日には、全国から学生たちが集まり、数千人の規模に。
 
●独裁から民主化(p117)
〔 台湾の民主化はいくつもの奇跡が重なっている。だが、最大の奇跡は、専制体制の中で順調に出世し、ついに独裁的権力を手に入れた男が、自らの独裁的権力を使い、独裁体制を打ち壊し民主化を進めようとしたことだろう。〕
 李登輝のこと。
 
●TAIWAN(p140)
 2002年、台湾正名運動が起こる。中華民国ではなく台湾を正名とする運動。在日台湾人の外国登録証明書の記載も、中国(昭和27年以来)から「台湾」に変更させることを目指した。
 2003年9月1日より、中華民国パスポートにTAIWANと付記されるようになった。台湾アイデンティティ、台湾ナショナリズムが広く浸透。
 2009年7月、日本も在日台湾人の外国人登録証明書の記載を「中国」から「台湾」に変更。
 
●92年コンセンサス(p180)
 1992年、共産党と国民党双方の中台窓口で非公式に口頭で確認された「一つの中国」原則。
 それぞれが「一つの中国」の解釈を述べることができるという認識を共有しているということで、これを中国語で「一中各表」と表現している。
 
●歴史教科書(p190)
〔 陳水扁政権時時代の歴史教科書では、台湾の日本統治時代については、日本が台湾の近代化に取り組んだ事業については肯定的な評価が行われている。ちなみに戒厳令下の国民党独裁政権時代の歴史教科書では中華民国の歴史によって万里の長城や長江については教えられても、17世紀初頭にスペインが建てた紅毛城の成り立ちは教えられなかった。日本統治時代の歴史が義務教育で教えられるようになったのは李登輝政権誕生以降だ。陳水扁政権8年の間に、チャイニーズでなくタイワニーズという意識は大きく広まった。〕
 
●産経新聞台北支局(p196)
〔 文化大革命のときに、世界中の新聞社が文革は素晴らしい革命であると絶賛していた中で、『産経新聞』が文革の本質は権力闘争であると報じたために、特派員・柴田穂〈みのる〉は強制退去処分となり、以降、産経新聞記者は中国入国禁止となった。代わりに台湾・台北に支局を置くことができた。中国は北京に支局を置いている新聞・通信社に対し、同時に台湾に支局を置くことは許さなかったので、産経は長らく台北に存在する唯一の日本新聞社だった。〕
 
●天然独立(p370)
 独立宣言などしなくても、独立した民主主義国、台湾人のアイデンティティを持つタイワニーズの国となること。
 
●統一の大義(p371)
 中華民国を樹立した国民党が消滅したり、党是から92年コンセンサスや一中原理を消してしまったら、中華民国の意味も変わる。
 中国にとっては、国共内戦の相手がいなくなり、和平統一の選択肢、統一の大義がなくなる。
〔 統一の大義がないならば、中国の選択肢としては統一を放棄するか、武力統一という名の侵略を行うかの二択しかない。中国・習近平政権が統一の選択肢を放棄すれば、それは体制の崩壊につながりかねないのだから、武力統一、台湾侵攻の選択肢しか残されない。〕 
 
●中国朋友圏(p374)
〔 好むと好まざるとにかかわらず、今後の国際社会は、よりはっきりと西側自由主義陣営と中国朋友圏陣営の対立という新冷戦構造のかたちになっていくだろう。〕
 
●日本に統一(p377)
 米軍事顧問団で資材管理をしていた台湾人の「黄」老人の意見。
 「台湾は日本に統一されるべきだ。日本はそうする責任があるはずだ」
 「馬関条約(下関条約)ではっきりと台湾、澎湖諸島は日本に割譲された。だがサンフランシスコ条約で日本国は、台湾および澎湖諸島に対するすべての権利、権限及び請求権を放棄する、としたが、では台湾がどこに帰属するかは明確にしていない」
 「日本は台湾の主権を放棄したが、誰に譲るとは決めていない。宙ぶらりんのままだ。だから台湾の帰属問題に関してまだ日本には発言権があるはずだ。日本が放棄した権利を取り戻すことだってできるはずだ」 
 
(2024/1/22)NM
 
〈この本の詳細〉


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