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旅するカラス屋
 [自然科学]

旅するカラス屋
 
松原始/〔著〕
出版社名:角川春樹事務所
出版年月:2021年4月
ISBNコード:978-4-7584-1376-3
税込価格:1,650円
頁数・縦:256p・19cm
 
 カラスを研究テーマとする動物行動学者による、旅がらすならぬカラス旅のエッセー。屋久島、知床、ウィーン、ブタペスト、ランカウイ島(マレーシア)、ウプサラを訪れた時のカラス探しの旅の様子を綴る。軽妙でありながら程よい薀蓄と微笑のネタがちりばめられていて心地よい。
 時にカラス旅に同行し、共同で論文を執筆する森下英美子さん(東京大学農学部の研究室に勤務)が気になった。調べてみると、1958年生まれで、『カラスの自然史ーー系統から遊び行動まで』(北海道大学出版会、2010年)、『カラス、どこが悪い?』(小学館文庫、2000年)などの共著があるようだ。
 
【目次】
はじめに さあ、カラスづくしの旅へ
第1章 調査のためのカラス旅
 カラス訪ねて山々へ
 世界遺産屋久島山頂域へ
第2章 学会もまた旅である
 そもそも学会とは
 東欧に暮らすカラスたち
第3章 カラス旅での出会い
 知床のワタリガラス
 世界のカラスを知る旅へ
 北欧のカラス
おわりに 旅はまだまだ終わらない
 
【著者】
松原 始 (マツバラ ハジメ)
 1969年、奈良県生まれ。京都大学理学部卒業、同大学院理学研究科博士課程修了。専門は動物行動学。東京大学総合研究博物館・特任准教授。研究テーマはカラスの生態、及び行動と進化。
 
【抜書】
●7種(p12)
 世界には約40種のカラスがいる。
 日本で記録されたカラスは7種。ハシブトガラス、ハシボソガラス、ワタリガラス、ミヤマガラス、コクマルガラス、ニシコクマルガラス、イエガラス。
 
●ポリウレタン(p16)
 ポリウレタンとは、単体のウレタン同士が結合して連なったもの。ウレタン重合体。長年使っていると湿気が浸透し、結合部分に水素と水酸基がくっついて、勝手に分解してしまう。加水分解。
 
●聞きなし(p232)
 鳥の鳴き声を人間がわかりやすく言葉で表現すること。ウグイスの「ホーホケキョ」、ホトトギスの「テッペンカケタカ」、エナガの「チーチー チリリ ジュリリ」、目白の「チョイチョイチューチュルル」、など。
 
(2021/12/20)NM
 
〈この本の詳細〉


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世界と日本の地理の謎を解く
 [歴史・地理・民俗]

世界と日本の地理の謎を解く (PHP新書)
 
水野一晴/著
出版社名:PHP研究所(PHP新書 1259)
出版年月:2021年5月
ISBNコード:978-4-569-84948-5
税込価格:1,045円
頁数・縦:251p・18cm
 
 自然地理学が専門の著者が、これまでに疑問に思ってきたことについて、文化や人類学の知見も取り入れて学術的に解説する。地理学の面白さを伝える1冊。
 
【目次】
第1章 フィヨルドはどのようにしてできたのか?―ノルウェー、ニュージーランド、日本のリアス海岸
第2章 火山島誕生後、島はどのように森に覆われていくのか?―ハワイ、桜島、雲仙普賢岳
第3章 砂漠の砂丘はどのようにしてできたのか?―ナミブ砂漠、カラハリ砂漠、鳥取砂丘
第4章 温暖化は、高山の氷河や生態系、住民生活にどのように影響を及ぼすのか?―ケニア山、キリマンジャロ、北アルプス、南アルプス、中央アルプス
第5章 日本の平野に築かれたお城や海外のお城の地形的共通点は?―江戸城、名古屋城、大阪城(真田丸)、ドイツの城
第6章 なぜ、そこに山があるのか?―富士山、アポイ岳、早池峰山、南アルプス、中央アルプス、北アルプス、丹沢山地、比叡山、比良山地、大文字山、吉田山、ヒマラヤ、エベレスト、キリマンジャロ、ケニア山、ルウェンゾリ山地
第7章 なぜ、イースター島、ハワイ、マダガスカルは1万キロも離れているのに言葉が似ているのか?
第8章 なぜ世界どこでも山が信仰の対象になるのか?―御嶽山、愛宕山、ヒマラヤ、ケニア山、アグン山(インドネシア・バリ島)、アンデス
 
【著者】
水野 一晴 (ミズノ カズハル)
 京都大学大学院文学研究科地理学専修・教授。理学博士。1958年名古屋市生まれ。名古屋大学文学部地理学専攻卒、北海道大学大学院修士課程修了、東京都立大学大学院博士課程修了。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科助教授などを経て現職。専門は自然地理学(植物地理学)だが、人文地理学や人類学的調査も行っている。これまで調査・研究で世界50か国以上を訪れている。
 
【抜書】
●雪線(p18)
 雪が解ける量よりも雪が積もる量のほうが多い高度の下限。雪線より高い山があれば、雪線の高度より上の場所では、氷河ができる。
 積もった雪は、自らの重みで下のほうから雪の結晶が結合して氷になる。氷は地表を滑るので、徐々に斜面下方に移動する。それが氷河。
 
●カール、モレーン(p20)
 カール……氷河は、流れるときに地面をすり鉢状に削る。これがカール地形。
 モレーン……氷河は、削った砂礫をブルドーザーのように押し運ぶ。温暖化すると氷河が後退をし始める。氷河が最も拡大した時の氷河前面に砂礫の高まりが残る。これがモレーン。
 U字谷……海外にあるような長大な氷河は谷を削って流れ、谷の断面がU字型のU字谷を作る。
 
●キリマンジャロの氷河(p84)
 キリマンジャロの氷河は、温暖化により2020~2030年代に消滅すると予想されている。
 キリマンジャロ登山の6か所のキャンプ地の河川水の多くは氷河の解け水由来。氷河がなくなると、キャンプ地の水は涸れてしまう。
 
●氷河の定義(p89)
 氷河の国際的な定義は、「重力によって長時間にわたり連続して流動する雪氷体(雪と氷の大きな塊)」。
 (1)陸上、(2)移動する、(3)雪と氷の大きな塊、の三つが氷河の条件。
 日本の雪線は、すべての地で山地より高いので、氷河はないとされてきた。
 2012年に日本雪氷学会にて発表された論文では、観測の結果、剣岳の三ノ窓雪渓と小窓雪渓、立山の御前沢(ごぜんざわ)が氷河と認められた。
 カムチャツカ半島とされていた極東の氷河の南限は、富山県・立山連峰となった。
 2018年には、北アルプスの鹿島槍ヶ岳のカクネ雪渓、剣岳の池ノ谷(いけのたん)雪渓、立山の内蔵助雪渓、2019年には唐松岳の唐松沢雪渓も氷河と認められた。日本の氷河は7か所。
 
●洪積台地(p125)
 洪積台地(台地)とは、最終氷期の最盛期である2万年前以前にすでに海から顔を出していた高台。これらの地形が作られた時代を、かつては「洪積世」と呼んでいた。
 最終氷期に作られた谷に泥がたまった地形を沖積平野あるいは沖積低地と呼び、その泥の層を「沖積層」と呼ぶ。また、これらの地形が作られた時代を「沖積世」と呼んでいた。
 日本ではこの時代区分が2万年前になるが、約1万年前にも海面が下がった時期がある。日本では地形の差や地層の不整合は不明瞭だが、ヨーロッパでは顕著で、1万年前で時代区分され、「漸新世」「完新世」と呼ばれるようになった。「洪積世」「沖積世」という時代区分は現在では使われなくなった。洪積台地も、単に台地と呼ぶようになってきた。
 
●プレート(p146)
 地球表面は、地殻と上部マントルからなる、厚さ100kmくらいの硬い岩盤に覆われている。プレート。
 プレートは、海洋プレートと大陸プレート合わせて14~15枚もある。海洋プレートのほうが強固で密度が高いため、二つがぶつかると海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込んでいく。
 
●橄欖岩(p152)
 地球の全体積のうち、橄欖(かんらん)岩が82.3%、玄武岩が1.62%、花崗岩が0.68%を占めており、地球はほとんどがこの三つの岩石からなっている。
 橄欖岩は、地中奥深くでマントルを作っているために、地表には少ない。
 地殻より内部の70kmから2,900kmくらいまでが、橄欖岩からなるマントル。
 玄武岩は主に海洋の地殻を、花崗岩は大陸の地殻を作っている。
 橄欖岩が地表に出てくる場所が、日高山脈の南端の襟裳岬近くにあるアポイ岳(810m)。
 橄欖岩は、非常に不安定な岩石なので、地表に上がってくる過程で水に触れて変質し、蛇紋岩になる。しかし、アポイ岳やその周辺にみられる橄欖岩はほとんど変質しておらず、新鮮なのが特徴。地名をとって、「幌満橄欖岩」と呼ばれている。
 かつて、日高山脈は北アメリカ・プレートとユーラシア・プレートの接合境界だった。千島列島を載せたアメリカ・プレートのマントル上部がめくれ上がり、のし上がった北アメリカ・プレートの底から橄欖岩が引きはがされ、500万年前に地表に現れてアポイ岳が誕生した。
 
●花崗岩(p172)
 岩石は日中日射を浴びて温度が上がり膨張し、夜間は冷やされて収縮する。花崗岩はその膨張収縮率が、岩石を構成する鉱物の石英、長石、黒雲母によって異なるため、1日の膨張収縮のたびにぼろぼろと遊離し、玉ねぎの皮を剝くように風化して剥離していく。
 花崗岩の風化を「玉ねぎ状風化」と呼んでいる。
 大文字山から比叡山にかけての花崗岩は、風化で白い色の石英が遊離し、それが川に流れて白砂が堆積する川となる。山麓に流れている川は「白川」と命名されている。
 
●エベレスト(p178)
 エベレストの標高は8,848m。
 対流圏と成層圏の境界の「圏界面」は、両極6,000m~赤道1万7,000m。対流圏では、地表から上昇気流が生じて大気の擾乱があり雲ができるが、山頂がこの圏界面を超えたとしても雲ができないため、日中は強い日差しで、夜は急速に冷え、機械的風化作用が活発で岩盤は砕けていき、長い年月を経れば圏界面より低くなる。
 高い山の標高は、圏界面の高度によって決まる。
 
●イースト・サイド・ストーリー(p187)
 アフリカ大地溝帯の西側にルウェンゾリ山地が形成され、ギニア湾からの湿った風が東アフリカに届かなくなり、乾燥化して熱帯雨林が消失し、草原のサバンナになった。そこで人類の祖先が熱帯雨林からサバンナに進出し、二足歩行するようになった、というのが定説だった。フランスの人類学者イヴ・コパンによる「イースト・サイド・ストーリー」(1982年)。
 しかし、近年、この説が否定されるようになる。
 800万年前の大地溝帯付近の隆起はまだ小さく、実際に山脈が形成されたのは、400万年前。すでに600万年前に二足歩行が始まった。
 800万年前の東アフリカは完全に乾燥化したわけではなく、かなりの森林が残っていた。
 アフリカ西部のチャドで600~700万年前のトゥーマイ猿人の化石が発見された。
 2003年2月、コパン自身がこの説を撤回した。
 
●あやとり(p205)
 ポリネシアン・トライアングル……北端をハワイ諸島、南東端をラパヌイ(イースター島)、南西端をアオテアロア(ニュージーランド)とする三角形。この地域では、オーストロネシア諸語が使われ、伝統文化、芸術、宗教なども似通うポリネシア文化圏を構成する。
 あやとりは、ポリネシアに共通する文化。
 
(2021/12/20)NM
 
〈この本の詳細〉


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