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名画の生まれるとき 美術の力Ⅱ
 [芸術]

名画の生まれるとき~美術の力II~ (光文社新書)
 
宮下規久朗/著
出版社名:光文社(光文社新書 1161)
出版年月:2021年10月
ISBNコード:978-4-334-04568-5
税込価格:1,320円
頁数・縦:296p・18cm
 
 美術に関する小論・考察を55編集めたエッセー集。「産経新聞」夕刊に毎月連載している「欲望の美術史」の2017年12月から2021年8月までの記事を中心に、その他の媒体に書いた記事16点を加えて、大幅に加筆修正して再構成した。
 個々の美術作品の背景を綴り、作品の見方をわかりやすく指南してくれる。たまには美術館に行き、ゆったりと美術に浸りたいと思った。
 
【目次】
第1章 名画の中の名画
第2章 美術鑑賞と美術館
第3章 描かれたモチーフ
第4章 日本美術の再評価
第5章 信仰と政治
第6章 死と鎮魂
 
【著者】
宮下 規久朗 (ミヤシタ キクロウ)
 1963年愛知県名古屋市生まれ。美術史家、神戸大学大学院人文学研究科教授。東京大学文学部美術史学科卒業、同大学院修了。『カラヴァッジョ―聖性とヴィジョン』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞などを受賞。
 
【抜書】
●犬(p130)
 犬がモチーフとして女性の傍らに描かれると、その女性の夫への貞節という美徳を表した。
 ヤン・ファン・エイク「アルノルフィーニ夫妻像」(1434年)には、夫婦の間に犬がいるが、これは妻の夫への忠節心を表している。
 男女の間に犬がいるか、あるいは女性が犬を抱いていれば、それは兄弟や親子ではなく、夫婦を示す。
 
●手紙(p136)
 フェルメールの作品は世界に三十数点しか現存していない。そのうち、6点が手紙を主題としている。
 
●浴衣(p175)
 上野公園にある西郷隆盛の銅像は、東京美術学校に制作が依頼され、高村光雲が同僚や弟子たちと十年近くをかけて作った。木彫を原型としているため、仏像のような丸みのある造形となっている。
 1898年にこの像が除幕されたとき、西郷未亡人の糸は、主人はこんな人ではないと叫んで関係者を慌てさせた。
 この像が西郷に似ていなかったからではない。この像が浴衣の着流し姿だったため。西郷は浴衣姿で人前に出るような礼儀知らずではない、と訴えたらしい。
 
●慰安婦像(p232)
 キム・ウンソンとキム・ソギョンの彫刻家夫婦によって作られた、チマチョゴリの少女の座像。2011年に慰安婦問題を告発する記念碑としてソウルの日本大使館の前に置かれた。
 2019年8月1日に始まった「国際芸術祭あいちトリエンナーレ2019」の企画の一つ「表現の不自由展・その後」で「平和の少女像」として展示されたが、3日間展示されただけで企画展が中止された。
〔 ただ、問題の像を会場で政治的な先入観なしに客観的に見れば、この像自体には何らの意味も造形的な強さもない凡庸な像に過ぎないことがわかるはずだ。そして、そんな像でも文脈や設置場所次第で大きな力や火種になりうるということから、美術や造形の意味や役割について考える絶好の機会になったであろう。そう思うと、やはり中止は残念であり、展示を見たかったと思うのである。〕
 
●鍾馗(p252)
 中国の道教系の神。病魔退散の神。
 マラリアにかかった唐の玄宗皇帝が、鬼を退治する人物を夢に見て、それを画家の呉道玄に描かせたのが始まりだと伝えられている。
 
(2022/1/19)NM
 
〈この本の詳細〉


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