SSブログ

米中戦争 「台湾危機」驚愕のシナリオ
 [社会・政治・時事]

米中戦争 「台湾危機」驚愕のシナリオ (朝日新書)
 
宮家邦彦/著
出版社名:朝日新聞出版(朝日新書 836)
出版年月:2021年10月
ISBNコード:978-4-02-295145-8
税込価格:891円
頁数・縦:256p・18cm
 
 「あるか、ないか」ではなく、「あるとすれば何時か」という段階に入った「米中戦争」に関して、台湾に視点を据えてマトリクス分析を行い、その抑止方法について考察する。
 しかしながら、結論にある、中国と台湾の関係の「現状維持」(p.252)が最善の状態であるという前提が気になる。米国のスタンスとして、過去の経緯により、台湾の独立は念頭にない、ということだ。中国を国家として承認する過程で「一つの中国」を是認しているからだ。
 つまり、台湾は未来永劫、「国家」として認定されず、宙ぶらりんな状態が続くことになる。この状態をいつまで続ければいいのだろうか。中国が台湾を国家として認めるまでだろうか。
 過激な考え方、もしくは現実を無視した考え方なのかもしれないが、台湾を国家として認める方向で現状を変更していくことによってしか、根本的な解決にはならないのではないだろうか。そうしなければ、台湾海峡の両岸の緊張は、この先ずっと消えることはないだろう。
 もしくは、平和的に台湾が中国に併合される時か?
 
【目次】
第1章 国交正常化後の米中関係―過去から将来のマトリックス分析
第2章 中国の発展に関するモデル分析
第3章 「脅威」とはなにか
第4章 「能力」以上に重要な「意図」
第5章 中国の「目的」「動機」を左右する内外情勢
第6章 「グレーゾーン事態」「ハイブリッド戦争」―古くて新しい概念
第7章 「グレーゾーン事態」「ハイブリッド戦争」を如何に抑止するか
第8章 米中の軍事対立に関するマトリックス分析
第9章 中台双方の「目的」に関するマトリックス分析
第10章 中台双方の「動機」に関するマトリックス分析
最終章 米中戦争を如何に「抑止」するか
 
【著者】
宮家 邦彦 (ミヤケ クニヒコ)
 1953年神奈川県生まれ。キヤノングローバル戦略研究所研究主幹、立命館大学客員教授。1978年に外務省入省。外務大臣秘書官、中近東第一・第二課長、日米安全保障条約課長、在中国・在イラク大使館公使、中東アフリカ局参事官を歴任。2005年に退職し外交政策研究所代表を経て現職。
 
【抜書】
●グレーゾーン事態(p123)
 純然たる平時でも有事でもない事態であり、領土や主権、経済権益などをめぐる主張の対立を背景としつつも、明白な武力攻撃事態と認定することが困難な主権侵害、あるいは、その発生の可能性が高い事態。
 
●ハイブリッド戦争(p124)
 「防衛白書」による解説。
 「軍事と非軍事の境界を意図的に曖昧にした現状変更の手法であり、このような手法は、相手方に軍事面にとどまらない複雑な対応を強いることになります。
 例えば、国籍を隠した不明部隊を用いた作戦、サイバー攻撃による通信・重要インフラの妨害、インターネットやメディアを通じた偽情報の流布などによる影響工作を複合的に用いた手法が、「ハイブリッド戦」に該当すると考えています。このような手法は、外形上、「武力の行使」と明確には認定しがたい手段をとることにより、軍の初動対応を遅らせるなど相手方の対応を困難なものにするとともに、自国の関与を否定するねらいがあるとの指摘もあります。」
 
●まだらグラデーション(p150)
 中国の脅威は、「脅威」=「能力」(「手段」×「機会」)×「意図」(「目的」×「動機」)として分析すべきであり、米中戦争は「グレーゾーン事態」と「ハイブリッド戦争」が「まだらグラデーション」状態で発生する可能性が高い。
 
●現状維持のための「意図」(p251)
〔 さてさて、まずは、ここまで辛抱強くお付き合い頂いた読者各位の強靭なる「知的体力」に対し深甚なる謝意を表したい。ここまで、台湾をめぐる「米中戦争」勃発の可能性と、その「抑止」方法について、駆け足ではあるが、可能な限り「虱潰し」の議論を行ったつもりだ。しかし、これだけ精緻な分析を行った割に、筆者の結論は意外なほど常識的なものとなった。
 要するに、台湾と米国が現状維持のため最大限の「意図」を持てば、中国による台湾武力侵攻を「抑止」することも不可能ではないということだ。逆に言えば、万一、台湾や米国が本気で現状を維持する「意図」がなければ、対中「抑止」は減殺され、中国の国家「目的」は成就するだろう。そうなれば、西太平洋における米国のプレゼンス自体が徐々に弱体化していく恐れすらある。
 されば、中国の台湾に対する「脅威」が顕在化する前に、我々はそれを「抑止」する準備を始めなければならない。これは決して他人事ではなく、21世紀後半の日本の国際的地位を決定づけるという意味で極めて重要な課題となる。これから2030年代までの10年間に日本に求められる課題は何か、また、その課題が見つかった時にそれを実行する知的、財政的体力が果たして日本に残っているだろうか。
 日本の正念場はこれからである。〕
 
(2022/1/28)NM
 
〈この本の詳細〉


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

アルゴリズムの時代 機械が決定する世界をどう生きるか
 [コンピュータ・情報科学]

アルゴリズムの時代 機械が決定する世界をどう生きるか
 
ハンナ・フライ/著 森嶋マリ/訳
出版社名:文藝春秋
出版年月:2021年8月
ISBNコード:978-4-16-391422-0
税込価格:1,870円
頁数・縦:294p・19cm
 
 IT化が進む現代社会を支配しているのはアルゴリズム?
 様々な分野で幅を利かす「アルゴリズム」を詳述し、それでも人間は機会と共生できる、ヒトは機械をうまく利用しながら生きていくことができると説く。
 
【目次】
1章 影響力とアルゴリズム
2章 データとアルゴリズム
3章 正義とアルゴリズム
4章 医療とアルゴリズム
5章 車とアルゴリズム
6章 犯罪とアルゴリズム
7章 芸術とアルゴリズム
結論 機械とともに生きる時代に
 
【著者】
フライ,ハンナ (Fry, Hannah)
 1984年、イギリス生まれ。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン高等空間解析センター准教授、数学者。数理モデルで人間の行動パターンを解析する研究をおこない、政府、警察、健康分析企業、スーパーマーケットなどとも協力している。TEDトークで人気を集め、BBCやPBSのドキュメンタリーの司会も務める。アダム・ラザフォードとのBBCの科学ポッドキャスト『The Curious Cases of Rutherford & Fry』は人気長寿番組になっている。
 
森嶋 マリ (モリシマ マリ)
翻訳家。
 
【抜書】
●感度、特異度(p117)
 乳がん検査アルゴリズムの場合、
 感度……問題のある組織を見逃さず、はっきりと教えてくれること。見逃し。
 特異度……正常な組織をがん細胞と間違えないこと。誤検知。
 多くの場合、アルゴリズムの精度を上げるには、感度と特異度のどちらかを優先させなければならない。
 
●プレッドポル(p197)
 予測警備。「プレディクティブ・ポリシング」の略。
 
(2022/1/28)NM
 
〈この本の詳細〉


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ: