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戦争が巨木を伐った 太平洋戦争と供木運動・木造船
 [歴史・地理・民俗]

戦争が巨木を伐った: 太平洋戦争と供木運動・木造船 (236;236) (平凡社選書 236)
 
瀬田勝哉/著
出版社名:平凡社(平凡社選書 236)
出版年月:2021年1月
ISBNコード:978-4-582-84236-4
税込価格:4,180円
頁数・縦:526p・20cm
 
 太平洋戦争時、艦船の不足を補うため、軍部は、物資輸送のための木船(特に機帆船)を多数建造する計画を立て、民間の巨木をも供木・献木させる施策を推進した。その一部始終を検証する。
 学術書というより、ルポルタージュ。5年半にわたる文献・資料探索、現地取材を経て書き上げた学術的ルポルタージュである。きっかけが学生の卒業論文だったことに始まり、取材に至るいきさつなど、エピソードも満載。読み応え十分である。
 
【目次】
はじめに それは一学生の卒業論文から始まった
第1部 供木・献木
 太平洋戦争と「軍需造船供木運動」
 供木・献木「魁」の大ケヤキ
 「率先垂範」する天皇・大社寺
 「巨木挙つてお召しに応じよう」
 軍需造船供木運動の全国的動向
 官製「国民運動」の理想と現実
 メディア・文化人の動員
第2部 木船
 木船に賭ける日本
 木船造船所の数と分布
 木船造船所の視察と業界の提言
 漫画家の『僕の木船見学』を読む
 木船は活躍できたか
第3部 木の終戦
 伐採された木の行方
 伐採を免れた巨木・大木
おわりに 「木の事件史」を記憶する
 
【著者】
瀬田 勝哉 (セタ カツヤ)
 1942年生まれ。大阪府大阪市出身。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。武蔵大学名誉教授。専攻は京都中世史、木の社会史・文化史。
 
【抜書】
●石(p92)
 木材の量を表す単位。
 一石は、1尺×1尺×10尺。
 
●散居村(p148)
 農家が家の周辺に農地を持って耕作し、各家には周囲に屋敷林を巡らせる集落の形態。散村とも言う。
 
●田澤義鋪(p165)
 たざわよしはる。親友の下村湖人が田澤の伝記『田澤義鋪』を書いている。
 1924年(大正13年)、大日本連合青年団を結成。西洋的な近代国家を目指す過程で失われていく郷土を取り戻すべく、「修養」生活という精神運動によって、郷土への明確な意識と知見を有し主体的に地方自治を担いうる若い人材の育成を目指す。
 翌年、運動の総本山として神宮外苑に日本青年館を開館。
 明治神宮の森づくりのために全国から10万本の献木が行われたが、その運搬に青年団があたった。
 のち、1929年(昭和4年)に壮年団が結成される。壮年団期成同盟会。青年団が終了する25歳から40歳が対象。「修養」を卒業し、「実行力」「実践」が重視される。
 壮年団は、太平洋戦争を機に、他の団体と合流して大日本翼賛壮年団へと変貌していく。
 
(2022/8/30)NM
 
〈この本の詳細〉

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